ビジネス

企業創業家と意見対立すれば「中興の祖」でも地位追われる

セブン&アイ・ホールディングスのHP

 企業にとって創業家の意向は「水戸黄門の印籠」にも似た威力を持つ。今年はそのことを思い知らされるニュースが相次いでいる。

 まずはセブン&アイ・ホールディングス。「流通の神様」と呼ばれたカリスマ経営者の鈴木敏文会長が提案したセブンの社長解任案に、創業者である伊藤雅俊・名誉会長が真っ向から反対。鈴木氏はまさかの会長退任に追い込まれた。

 出光興産では、月岡隆社長ら経営陣が進める昭和シェル石油との合併計画に出光昭介・名誉会長ら創業家が反対し、合併に暗雲が漂っている。他にも、大手警備会社のセコム、外食チェーンの大戸屋などで「モノ言う創業家」が存在感を示している。

 いずれも現経営陣と創業家側の対立構図の中で、創業家側の“天の声”が大きな影響力を持っているのである。

 三菱、三井、住友といった旧財閥系企業では創業家が経営からも資本的にも影響力を失い、「資本と経営の分離」が進んできた。

 それがなぜ、いまになって創業家の存在感が増してきたのか。『経済界』編集局長の関慎夫氏はこう指摘する。

「不透明な国内の景気や国際経済の流動化の中で企業が大きな岐路に立っているいま、大株主である創業家の拒否権がクローズアップされている。

 セブン&アイの騒動で問題になったのは社長人事でした。創業家が世襲させていないのに、番頭である鈴木家が息子に社長を世襲させようとしたとみられてしまった。伊藤家はそれに抵抗して、拒否権を発動したのでしょう」

 退任表明から5日後、本誌が鈴木氏を直撃すると、「創業家とゴタゴタするようなことになれば、経営者として話にならないと思った」と語った。“中興の祖”ともいえる鈴木氏にして、創業家との意見対立が生じればその地位を追われる。これが「資本と経営」の現実だ。

※週刊ポスト2016年7月22・29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト