『Youは何しに日本へ?』『家、ついて行ってイイですか?』『充電させてもらえませんか?』『どうして笑っていたんですか?』『ナゼ花をかったんですか?』…。これらはみなテレビ東京の番組タイトル(スペシャル番組含む)である。お気づきのように、すべて疑問符、クエスチョンマークで終わっている。
『Youは何しに~』(月曜午後6時55分~ )は、日本の空港に到着したばかりの外国人に来日理由をインタビューし、良ければそのまま同行させてもらうという、今やテレ東を代表する番組の1つだ。特番放送していた頃から数えると今年で4年目を迎える。
『家、ついて行ってイイですか?』(土曜午後7時54分~)。終電を逃した一般人に、番組側がタクシー代を負担するので「家、ついて行ってイイですか?」とお願いして家について行くバラエティーだ。最近は、地方のお店がないような集落へ出向き、移動販売車で買っている方に買い物代を肩代わりするから家に行かせてほしいというパターンも放送している。そこで出会う人々は、シンガーになる夢をあきらめたサラリーマンや、その日まさに会社を退職し、自分の送別会帰りの男性、また妻に先立たれたおじいちゃんなどさまざま。いずれにしても普通の人の人生にある「ドラマ」をすくいとっている。
『充電させてもらえませんか?』は、出川哲朗が、電動スクーターを走らせながら、行く先々で電源を借りては人のやさしさに触れていく旅番組。過去4回特番で放送されている。『どうして今笑っていたんですか?』は3年前に2度放送されたこちらもスペシャルであったが、街なかでよく見る、なぜか笑っている人に声をかけ、まさに「今あなたどうして笑っていたんですか?」ということを聞きだすというものであった。
また、2年前、これも単発ではあったが、『ナゼ花をかったんですか?』というスペシャル番組も放送された。花屋を訪れる人に花を買ったワケを直撃取材し、そのままついて行くというものだ。
そんなテレ東は、局を挙げてのキャンペーンとして「テレ東、見てもらっていいですか?」というこちらも疑問形のタイトルで、「7ch(関東圏のチャンネル数)を7時間見ると、抽選で100名に7万円プレゼントする」という企画を実施したこともある。
こうした疑問形のタイトルの番組が多いのは、企画の意図がすぐに明確になり、局にプレゼンする際も、一言で理解してもらいやすいからであろう。それは視聴者にも同じ。「ワンフレーズ」はダイレクトに頭に入ってくるし、何より口に出して言いやすい。
また、これらはすべて一般人を対象にした番組であるということも特徴。取材相手に切り出すときのフレーズがそのまま番組タイトルになっているのも興味深い。
ただ、「~~させてください」といきなりお願いするのではなく、相手の状況を考えて疑問形にすることで、言われたときの心理的なハードルを下げているのかもしれない。
だがピンポイントの番組ゆえの不安もある。企画の角度が鋭すぎると、ネタが尽きるのではないかと不安になりがちだ。実際、こうした「素朴な疑問」を解決する番組というのはとうしても番組の1コーナーにおさまってしまいがちだが、逆に間口が狭い一点突破主義の番組だからこそ、思わぬ形で広がったときに感動が生まれるということも考えられる。
ただ、思えば私たちも、初対面の人と話すときはさまざまな質問を投げかけ、結果、意外な共通点や驚きの経歴に行きついたりする。つまり、「?」から入り、「!」に出会うことがある。つまり以上挙げたようなテレ東の番組は一見、奇抜なように見えて、実は非常に身近で、共感しやすい、普遍的なニーズで支えられているのかもしれない。
(文・内堀隆史 放送作家・ライター 日本テレビ系『誰だって波瀾爆笑』など担当)