芸能

橋幸夫 「母は病床でも最後までデビュー曲を歌ってくれた」

母・サクさんと(橋幸夫。1989年)

「孝行のしたい時分に親はなし」というが、男にとって生まれて最初に接する異性である母の愛のありがたみは、失ってみて初めて気づくことがほとんどだろう。「瞼の母」の思い出を、歌手の橋幸夫氏(73)が語る。

 * * *
 僕は6男3女の9人兄弟の末っ子。長男とは24歳も違います。家業が染物屋だったし、長男が青年実業家として手広く商売をやっていたので、母も手伝っていました。母はいつも忙しく動き回っていましたね。

 そのため、僕は兄弟の影響を強く受けた。兄たちが通う道場について行くうちに、小学校で空手を始め、柔道、ボクシングと格闘技の道を進んだ。中学時代、空手仲間のちょっとグレた連中と付き合うようになりました。

 学校の先生から「橋の仲間が心配」との報告を受けた母は、仲間と切り離すために、僕を作曲家の遠藤実さんの歌謡学校のレッスン生にさせる作戦に出た。

 中学2年に始めたレッスンは週2回。学校から帰ってくると兄に拉致されるようにバイクで中野から西荻窪まで送迎された。母から「そのうち好きになる」といわれながら、3年間一度も休まなかった。母や兄の顔を潰せないというのが正直な気持ちでしたね。

 高校2年の春に『ロッテ歌のアルバム』という音楽番組で歌手デビューが決まった。母は大喜びしたが、親父は反対だった。そのため心臓病で入院していた親父に内緒でデビューすることにして、病室にテレビを持ち込んで生放送を見せて無理やり承諾させた。今考えても心臓には相当悪かったと思いますね(笑い)。

 デビュー曲の『潮来笠』は爆発的なヒットとなり、レコード大賞新人賞を受賞した。3年目には吉永小百合さんとデュエットした『いつでも夢を』でレコード大賞、その4年後には『霧氷』で2回目のレコード大賞を受賞しました。

 そんな僕の追っかけの第一号が母でした。地方公演はもちろん、テレビ局などどこでも付いてくるようになった。デビューして2年間は、未成年ということで姉がマネージャーをしてくれた。それに追っかけの母。昔の撮影所の写真を見ると兄たちが必ず映っていた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
愛子さま、初の単独公務は『源氏物語』の特別展 「造詣が深く鋭い質問もありドキっとしました」と担当者も驚き
愛子さま、初の単独公務は『源氏物語』の特別展 「造詣が深く鋭い質問もありドキっとしました」と担当者も驚き
女性セブン
“くわまん”こと桑野信義さん
《大腸がん闘病の桑野信義》「なんでケツの穴を他人に診せなきゃいけないんだ!」戻れぬ3年前の後悔「もっと生きたい」
NEWSポストセブン
中森明菜
中森明菜、6年半の沈黙を破るファンイベントは「1公演7万8430円」 会場として有力視されるジャズクラブは近藤真彦と因縁
女性セブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
報道陣の問いかけには無言を貫いた水原被告(時事通信フォト)
《2021年に悪事が集中》水原一平「大谷翔平が大幅昇給したタイミングで“闇堕ち”」の新疑惑 エンゼルス入団当初から狙っていた「相棒のドル箱口座」
NEWSポストセブン
昨年9月にはマスクを外した素顔を公開
【恩讐を越えて…】KEIKO、裏切りを重ねた元夫・小室哲哉にラジオで突然の“ラブコール” globe再始動に膨らむ期待
女性セブン
稽古まわし姿で土俵に上がる宮城野親方(時事通信フォト)
尾車親方の“電撃退職”で“元横綱・白鵬”宮城野親方の早期復帰が浮上 稽古まわし姿で土俵に立ち続けるその心中は
週刊ポスト
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者
【新宿タワマン刺殺】ストーカー・和久井学容疑者は 25歳被害女性の「ライブ配信」を監視していたのか
週刊ポスト