女性セブンの名物記者“オバ記者”こと野原広子が、世の中の腹立つことをぶった斬る! 今回は社会問題化しつつある「歩きスマホ」に怒りをぶつける。
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社会の真ん中を大手を振って歩けるのは、せいぜい40代まで。スマホをしながら歩けるのも若いからで、運動能力がある証拠ね。そんな物わかりのいいふりをしようとしたけど、はい、ここまでっ! ということが先日、起きた。
駅のエスカレーターが故障して、階段を下りていたときのこと。前を歩くナイロン製の黒いリュックを背負った30代男が、ずっとスマホから目を離さないの。階段はあと5、6段。と、そのときスマホの中で何が起きたか知らないが、そいつ、「マジ!」と小さく叫んで一瞬、足を止めたんだわ。
踏み出した私の右足が、そいつにぶつかる前に、小さなすき間を見つけて踏ん張ったから、何事もなかったけど、そのとき私がコケたり、そいつに衝突したら、間違いなく将棋倒しの大事故になった。そう思うと、胸の動悸がなかなかおさまらなかったわ。
しかし黒リュック氏は、自分にからまない限り、大事故が起きても、「マジ!」が原因だとは気づかなかったと思う。スマホを見ながら雑踏の中に消えて行った彼の後ろ姿を見送りながら、そう確信したね。
私だって一度も歩きスマホをしたことがないとは言わないよ。「了解」だの「あと5分」だの、短いメール操作をしたことはある。その結果、誰かの肩に触れて、「ごめんなさい、すみません」と謝り倒し。
でも、決してその逆はないんだよね。車の先をぶつけてきた若いベビーカーママも、チラリと顔を上げただけで謝らないし、30代、40代のサラリーマン氏は、謝らないどころか、ギロリと睨みつける。
そんなのはまだいいほうで、「チッ」と舌うちをされたり、「気をつけろ」と一瞬だけスマホから顔を上げて、捨てゼリフを吐かれたり。
年とともに怒りの反射神経も鈍くなるのか、「えっ? 何だとぉ」と思ったときは、敵ははるか後ろ。若かったら、追いかけていって文句のひとつも言うところだけど、口は動いても体はピクリとも動かない。
でもってそれだけでもないんだわ。歩きスマホをしている人の顔を見てごらん。みな、表情がなく不気味だから。“シャバ”を遮断しているからか、スマホから目を離してこっちを見る目もうつろ。
脅すわけじゃないけれど、昨今はそのうつろさにつけ込む、“歩きスマホ当たり屋”が出没しているらしいよ。わざとぶつからせて壊れた時計を落とし、「おう、どうしてくれるんだ」と金品を要求するんだって。夜道で歩きスマホをしている人を狙った強盗被害も出ているそう。
そりゃそうだよ。若い娘はスマホで視界を狭くしているだけじゃない。イヤホンで耳まで塞いで往来を歩いているんだから。いくら平和な日本でもさ、世間なめすぎてないか?
※女性セブン2016年8月4日号