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「歯を削って銀歯を詰める、被せる」を繰り返す日本の虫歯治療が、歯の寿命を短くし、抜歯へとつながる「負の連鎖」を引き起こしていた──。
本シリーズでは歯科業界の最大タブーが、日本人の口の7割に入っているといわれる銀歯であることを指摘してきた。
銀歯治療では実際の虫歯部分のみならず健康な部分も大きく削る必要性がある上、二次カリエス(治療後の歯が再び虫歯になること)を予防する目的で、隣の歯と隣接する、やはり健康な部分まで削っていた。そうした銀歯治療の理論的根拠となる「予防拡大」という概念を、本連載では明らかにしてきた。
一方、プラスチック系の白いコンポジットレジンは、歯を削る量を最小限に抑えることが可能だが、診療報酬が低いために普及が遅れた。そのことを東京医科歯科大・田上順次副学長の解説を中心に紹介した筆者の記事に西尾氏らからは反論の声があがった。
西尾氏はこういう。
「銀歯が良くない、コンポジットレジン充填が良い、という話を大げさに書いている。私の経験では、レジン充填は耐久性が低い。
また、レジン充填の時には6ミクロンの隙間が空くので、4ミクロンの大きさの虫歯菌が入り込んでしまうという報告もある(LSTR療法学会)。一方の銀歯はセメントで接着するので、隙間は2ミクロン。
結局、これらは『説』なので、どちらが正しいとは一概に言えないはず」(筆者注・接着面の隙間については諸説ある)
小林氏は素材だけの問題ではないと指摘する。
「治療に最適な金属は、金とプラチナですが、高額なために保険で使用されている銀歯には、様々な金属をまぜた合金が使われます。
それでも、30年経って二次カリエスになっていない銀歯もありますし、すぐに破損するレジン治療のケースもあるのです。本当に重要なのは、すべての段階で丁寧に治療を行なうことであり、金属だからダメというのは疑問です」