「入居者の方々には本当の我が家だと思ってもらいたい。そのために意識していることは色々ありますが、わかりやすいところで言えば、“部屋の匂い”に配慮しています。
介護施設特有の医薬品や消毒液の匂いがしないよう、一般家庭のような“生活臭”を大切にしています。施設全体に調理中の匂いが行き渡るような設計にしているので、時間が分からなくても、匂いで食事だとわかるんです。月に一度は入居者の家族を招いて一緒に料理を作ってもらうのですが、“実家へ里帰りに来たみたい”との感想をいただきます」(同前)
1年半前に親族がこの施設で看取られたという女性が話す。
「叔母はこの施設がとても気に入っていて、最期も“みんながいるリビングから離れたくない”と居室に戻ることを拒否し、ついにリビング脇の和室で息を引き取りました。親族の付き添い宿泊も快く受け入れてくれたので、最期まで一緒にいることができました。
今でも入居されている方が私の家族のように思えるので、週に1度は遊びに来てお手伝いさせてもらっています」
小規模のグループ施設ならではの温かさだ。
※週刊ポスト2016年8月19・26日号