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自分の意志をどう言葉にするか その作法について考えてみた

いかに自分の真意を伝えるか(写真:アフロ)

 8月8日に発表された天皇陛下の「お気持ち」に対して、さまざまな受け止め方があるだろう。大人力コラムニストの石原壮一郎氏はそこに、究極の大人力を見た。

 * * *
 たいへん感銘を受けました。究極の「大人力」を見せていただきました。もしかしたら「こんなところで話題にするとはケシカラン!」と感じる人もいるかもしれません。畏れ多いのは重々承知の上ですが、日本国の象徴であり日本でもっとも敬愛されている方が、全身全霊を込めて発してくださった大切な「お言葉」です。真摯に受け止めて全力で学ばせていただくのは、いわば国民の義務と言えるでしょう。

 ここで言う「お言葉」とは、8月8日に天皇陛下が国民に発したメッセージのこと。日本国憲法の第1条で規定されている「象徴」という立場を大切にしつつ、第4条の「国政に関する機能を有しない」という記述を逸脱しないように、慎重に言葉を選びながら、全体としては「何とかして生前退位させてほしい」という意志が明確に示されていました。私たちはそこから「はっきり言えない制約がある中で、自分の意志をどう示すか」ということを学ぶことができます。

 しっかり着目し、機会があれば謹んで応用させていただきたいのは、次の3点。

その1「このままでは務めを果たすことが難しいと強調して真意をにじませる」

その2「予想される代案の問題点をやんわり指摘して本来の望みをにじませる」

その3「気持ちを率直に話した上で理解を強く求める姿勢が聞く側の心を打つ」

 いきなり身近な例をあげて恐縮ですが、会社生活でも「今のプロジェクトから抜けたい」「別の部署に異動したい」と切実に願ってしまうケースはよくあります。ただ、会社というところで個人の希望をストレートに主張するわけにはいきません。

 我慢を続けて無理が出る前に、全力で自分の意志を示すのが大人の勇気であり、差しさわりのない示し方をするのが大人としての誠実さです。まずは「その1」の教え。陛下はご自身の体力の衰えを憂慮しつつ「これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」とおっしゃいました。

 上司なりリーダーなりに、今の役割を果たしたい気持ちは十二分にあると強調した上で、自分の状況や今の仕事との適性などを冷静に話して、このままだとそれができなくなるかもしれないと心配していることを伝えましょう。けっして個人的な好き嫌いで言っているのではなく、会社全体を考えた上での提案という形をとることが大切です。

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