「企業会計制度が変わって退職金関連の債務が企業経営の負担として表面化するようになり、コスト圧縮の傾向が強くなったことに加え、“社員には長く勤めてもらわなくてもいい”という考えが、IT・小売・サービス業を中心に出てきた。新陳代謝の激しい業界では長期勤続の人材を抱えているメリットが薄くなった」
そこで導入が進んだのが、「ポイント制」だ。係長、課長、部長などの役職を経たことなどが評価されてポイントとなり、その蓄積に応じて退職金に差が付くようになった。年功よりも実質的な会社への貢献度を評価する人事制度だ。
東急百貨店の広報部は自社の退職金制度について、「基本的にはポイント制に近い」と説明する。
「勤続年数、役職、月給に応じたポイントに係数を掛け合わせたものが、積み重なっていく。社内では『退職基準給与累積額』と呼んでいます。当社の場合、大卒で入社して一番早く部長クラスに昇進できるのが44歳。そうした“最短コース”で定年まで勤めた場合のモデルケースでは、退職金は約2852万円となります」
ワコールでも「勤続年数、職位、職務評価がそれぞれポイントで示され、『1ポイント=500円』で計算する仕組み」(広報部)だという。
※週刊ポスト2016年8月19・26日号