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番組制作現場やTV局上層部にBPOへの恐怖心が蔓延

放送局はBPOに対して逃げの一手(写真:アフロ)

 視聴率競争に鎬を削るテレビ局の“お目付役”として知られているのが「BPO(放送倫理・番組向上機構)」である。NHKと民放連が出資して設立された“身内”とのバトルに、テレビ局側は「逃げの一手」のようだ。

 7月8日、BPOの放送倫理検証委員会がTBS系の『ピラミッド・ダービー』(6月19日放送分)について、「審議入り」することを決めた。同番組では、実際は最後まで解答した出演者を、映像を加工して途中で脱落したことにして放送。

「出演していた人をいないことにしたということで、簡単に消すと判断を下した人がいたことに驚いた」

 という意見が委員から出され、制作体制などを検証する「審議入り」の判断が下された。テレビ局側とBPOのバトルは、事実上、審議入り時点で終わる。キー局の情報番組スタッフが明かす。

「審議の結果、“お咎めなし”のケースは少なくないが、『審議入り』するだけで番組のイメージが悪くなりスポンサーが逃げてしまう。それに、審議のために大量の資料作りをしなければならなくなり、業務に著しく支障を来す。だから、審議入りが決まった時点で“負け”だ」

 民放連の井上弘会長がトップを務めるTBSの広報部は「BPOは自主的・自律的な第三者機関であり、公権力の関与によらずに放送の質を保つための優れた仕組みだと考えています」と“優等生的回答”をする。

 が、テレビ局スタッフの本音は、「審議入りしないための番組作りが何より重要。それをみんなが気にしているから、『BPOのせいで現場が萎縮している』という声も多い」(別のキー局ディレクター)というものだ。

「現場で『これ、BPOに引っかかって番組が飛ぶかも』なんて冗談は言えない。BPOへの恐怖心は上層部をはじめ、現場にも蔓延しているのでそんなことを言ったら大問題。『BPO』という言葉は現場ではタブー」(バラエティー番組スタッフ)という声も聞こえる。

 BPOは表向き「コメントは差し控える」というが、あるBPO関係者は「現場の萎縮につながっているという指摘があることは把握している」と語る。

 もちろん視聴者を騙すような演出は批判されてしかるべきだが、政権の顔色をうかがい、そのうえBPOとのバトルも避けて勝負しない放送ばかりを続けていれば、テレビ局は国民から見捨てられるのではないか。

※SAPIO2016年9月号

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