また友達のいない高齢者は実際に施設に入ったり病院に入院する際にも友達をつくることが難しい。それどころか人付き合いを避けるために個室を要求するなどして、金銭的にも負担が増すことになる。
そして極めつきは、「葬式に来てくれる人が誰もいない」事態だ。家電メーカー勤務の48歳女性が、父親の葬儀について振り返る。
「私の母は友達が多く、葬式に200人以上呼んで盛大にやりましたが、先ごろ肺がんで亡くなった父は友達がいないので、目立たないでやろうと、家族葬の形を取りました。ところが1か月後、父の死を知ったある男性がお焼香にやって来て、『お父さんには本当にお世話になった。葬儀くらい呼んでくれればよかったのに』と言ってきた。
父は昔、仲の良かった彼に仕事を紹介したことがあったそうです。兄に聞くと、30年前は家族ぐるみで付き合っていたが、それ以降疎遠になったので忘れていたと。父の友達なんて見たこともなかったから驚きました」
誰もいない葬式──最悪の事態を防ぐためにも、退職後の人間関係に思いをめぐらせたい。
※週刊ポスト2016年9月9日号