「子供たちに迷惑をかけたくないので、質素にしたい」と自分は思っていても、子供たちが「それでは故人が可哀想だ」と規模が大きな葬儀になったり、逆に、それなりの費用を準備していたのに、家族の考えで質素になってしまうこともある。
「家族と関係が悪くて話しにくいという場合は、エンディングノートなどに自分の意志や、葬儀社と話し合って決めたことを書き残しておくという方法もあります」(前出・冨永氏)
故人の遺志がはっきり示された文書があれば、トラブルは起きにくくなる。
また、葬儀というものの性質上、生前にあまり細かく厳密に決めてしまわないほうがいいという考え方もある。葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏はこう話す。
「自分はこうやって送ってほしいという希望を述べたうえで、送る側にも“考える余地”を残してあげたほうがいいと思います。残された家族の側が、亡くなった人をどうやって送り出してあげるかを考えることは、肉親を失った悲しみを癒やし、心のケアにつながることもあるのです。
そうしたことに思いを馳せ、自分1人で一方的に全部決めてしまうというよりは、大きな流れを葬儀社や家族と話し合っておくのが、幸せな葬儀につながっていくのではないでしょうか」
自分の葬儀を自分で決められる時代になり、残された者への思いやりをどう示すか、その選択肢が増えたともいえるだろう。
※週刊ポスト2016年9月9日号