「700万人といわれる団塊世代の多くは関東、中部、関西の都市圏に住んでいます。つまり2025年に起きる、介護士、看護師不足などの介護資源の枯渇は大都市でより顕著に起きます。ケアが行き届かないために、都市部での『異状死』が特に多くなると考えられます。都会に住み続けたい人は『異状死』を覚悟しなければならないのです」(前出・武藤氏)
そうした中で、家以外の死に場所となり得るのはどこか。介護サービス情報などを掲載する『月刊 あいらいふ』編集長の佐藤恒伯氏はこういう。
「国は各種病床を減らそうとしていますが、手をつけていないのが精神科の病床です。2014年のOECD(経済協力開発機構)の調査で、日本はその他の加盟国の4倍近くの精神病床数でした。約34万の病床があって、32万人が入院しています。
入院の必要性が低くても、行く場所がないからとどまっている人も多い。その中でも増えているのが、認知症が悪化して自傷や他傷行為などが出てきたという人たちで、精神病院の中の認知症病棟に入院し、長くとどまっている。その他の病床・施設が減らされる中で、2025年には認知症が悪化し、行き場は精神病院しかないというケースが増えてくる」
2015年1月、厚生労働省は2025年の認知症患者数が現在の1.5倍、700万人を超えるとの推計を発表した。
「700万人が行き場を失い、都市を徘徊する。私はこれを認知症パンデミックといっています」(前出・武藤氏)
※週刊ポスト2016年9月16・23日号