東京ドームでの胴上げを許した2日後の9月12日、オーナー会議を終えた巨人の老川祥一・オーナーは、報道陣を前に高橋由伸・監督の続投を示唆した上で、「今年は、勝てるチャンスがありながら勝てないケースもあった。どういう補強が必要か、全体として考えなければならない」と、大型補強に踏み出す決意を明らかにした。
実際、球団側は広島が独走態勢を築いていた7月のオールスター明けには、すでに他球団でFA資格を獲得する選手の調査を始めていたという。巨人担当記者の一人が説明する。
「フロントは最大の敗因を、今年も解消されなかった貧打にあると見ています。しかも若手が育つ見通しが立たない。だから、FAで即戦力を獲る以外にない。長嶋監督時代は、“FAで獲った選手が活躍できなくても、他チームの戦力が落ちればいい”という考えで、ポジションが重なるのも構わず飼い殺し要員をかき集めていたが、その頃の『欲しい欲しい病』に戻ろうとしているようだ」
今オフFAの目玉といえば糸井嘉男(35)。パの最下位オリックスにあって打率.315(3位)、本塁打17本、70打点と孤軍奮闘し、盗塁(53個)でもタイトルをうかがう(数字は9月21日現在、以下同)。
「糸井は機動力野球を掲げる金本・阪神が狙っているが、“人が欲しがるものは頂く”というのが巨人の伝統芸です。糸井は今、家族を東京に残して大阪で一人ホテル暮らし。それだけに、編成担当は“複数年契約などの条件面を弾めば、在阪球団より在京球団が選ばれるはず”と息巻いています」(球団関係者)
巨人の外野陣は定位置を固められているのが長野久義(31)だけという手薄さだけに、糸井に限らずライバル球団が興味を示す外野手には触手を伸ばそうとしているようで、日本ハムの陽岱鋼(29)や中日の平田良介(28)、大島洋平(30)らの名前も挙がっている。
「とくにチームの不振、突然の監督更迭、選手評価への不満などで内部崩壊が進む中日では、落合(博満)GMが続投するなら、“こんなチームにいられない”とFAで主力が流出することは避けられないとみられています」(前出の担当記者)
撮影■山崎力夫
※週刊ポスト2016年10月7日号