東京都港区といえば、新橋・虎ノ門のオフィス街、青山・赤坂のオシャレな商業地帯、六本木の歓楽街、麻布・白金台の高級住宅街など、さまざまな街の性格を持った巨大エリアが混在しているが、そんな港区が近年独自に進めているのが「喫煙所」の整備だ。
今年4月、新橋から続く「赤レンガ通り」に面したオフィスビル1階(新橋5丁目)にも、ガラス張りの真新しい喫煙所がお目見えした──。入り口の自動ドアには“港区指定喫煙場所”の青い貼り紙。この掲示がなければ、ビルに入居する企業社員の専用スペースか、はたまた商材のショールームかと見紛うほど。
1歩室内に入ると、常連とおぼしきサラリーマンが数人、仕事の資料やスマホに目を落としたり、同僚と談笑したりしながら、ゆったりと一服している。
「私は近くのオフィスで働いています。こんなところに公共の喫煙所ができたのは最近知りました。自社ビル内にも喫煙所はありますが、狭くて煙たいだけの空間なので、開放感もあってキレイなここをよく利用するようになりました。通勤の行き帰り、営業に出掛ける前などに立ち寄っています」(40代会社員)
朝9時から夜7時まで利用可能なこの喫煙所は、公共といっても実際にはビルの所有者で、コンクリート製品を扱う「日本ヒューム株式会社」が管理している。屋内喫煙所の設置に最大1000万円、維持管理費に年間上限144万円を助成する港区の制度を活用して作られた“官民一体”のスペースだったのだ。
助成を受ける条件として、〈一般に無料で開放すること〉〈最低5年間は継続して運営すること〉〈喫煙所の所在地等を港区ホームページに掲載し、広く一般に周知することができる状態にあること〉などが定められている。
しかし、普段から不特定多数の人々が訪れる商業施設ならいざしらず、社員や取引先しか出入りしない自社ビルの敷地内に無料開放の喫煙所を設置したのはなぜか。日本ヒューム総務部の担当者に話を聞いた。