私自身も出版界に長くいますが、作家と校閲者、編集者と校閲者はいわばコラボ関係にあります。それは、例えば舞台の上に立つ役者や歌手と、舞台上では見えない大道具小道具担当、照明係、演出家、といった関係にも似ているかもしれません。
つまり、どちらが偉いかという上下関係ではなくて、仕事の内容に「違い」があるだけ。ポイントは、どちらも存在しなければ成り立たない、互いが補完し合う関係だということ。
だからドラマの中で、メリハリや緩急をつけるのはOKでも、仕事に上下関係をつけたり、明暗をつけるのは、NG。私はそう思います。
もし、このドラマに一点だけ注文をつけさせていただくとすれば……河野悦子という個人にとって「ファッション誌の編集」という仕事は憧れでも、それをわかりやすく表現するために校閲部だけを地下空間に押し込め、ことさら暗く描く必要もない。ただ、別のフロアにすればいい。全体を俯瞰する「編集」という仕事と、細部を注意深く見る「校閲」。その違いを徹底的に描けばいい。
想像とはあまりに違う仕事に、主人公は最初すったもんだするけれど、次第にその奥深さや凄さに気付く……そこに人間関係、恋愛関係をからめていけば十分に面白くなるのでは。文句なく、人気コメディドラマになるはず。
『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』は応援したいエンタテインメントドラマ。だから頑張れ、校閲ガール!