自分に厳しい姿勢は、心臓外科の名医として知られる、昭和大学医学部心臓血管外科教授の南淵明宏氏にも共通する。
「失敗をいつまでも忘れない。1日1回、もっとうまくやればよかったと反省し、後悔する。そしてもっとうまくやろうと思う。毎日がその繰り返しです。僕は25年前の失敗に今も責め苛まれています」(南淵氏)
逆に自分のミスや失敗を周囲のせいにしたり、言い訳したりする医者は、いうまでもなく「ヤブ医者」だ。だが、名医になれる素質がない若い医師でも、彼らなりの道がある、と中込氏。
「脳外科にもさまざまな治療分野があり、簡単な手術もある。診断や簡単な手術を担当し、難しい手術や特殊な手術は他の医師に頼むというように、自分の技量を自覚して自分に合った道に進めばいいのです。すべての脳外科医が難しい手術ができる必要はなく、それぞれの分野に一部の上手な医師がいればいい」
名医でなくても、自分の技量を自覚し、必要があれば名医につないでくれる。こうした信頼できる医師に出会うことは、名医に出会うに等しいのだ。
※週刊ポスト2016年10月28日号