花王「ヘルシア緑茶」やサントリー「黒烏龍茶」などのヒット商品があり、市場規模6400億円(2015年度)に達する消費者庁許可の特定保健用食品(通称トクホ)。そのトクホ以上のハイペースで増え続けているのが、昨年4月に制度がスタートした「機能性表示食品」である。
機能性表示食品は学術論文など一定の科学的根拠を国に届け出るだけで、食品に含まれる成分の健康への働き(機能性)をパッケージに表示したり、宣伝したりできる。トクホの場合、メーカー側は根拠を示すための実験などが必要で開発には費用も時間もかかる。その点、機能性表示食品ならその手間が軽減される。
「トクホのように“脂肪を燃焼する”などと謳えるのに、効果や安全性は企業の責任に委ねられており、しかも消費者庁への届け出の60日後から販売できる。企業の負担を軽減する目的で、安倍政権の経済成長戦略の一環として導入されました」(前出・郡司氏)
制度開始から1年半で400件以上が受理されているが、効果の信頼性を疑問視する声もある。消費者団体「消費者市民社会をつくる会」は今年5月、専門家の協力を得て77商品について表示の「科学的根拠」の信頼度を独自に評価し、ウェブサイトで公開した。
それによると、科学根拠が「十分ある」とするAランクは77商品中16商品、「かなりある」のBランクは40商品、「ある程度ある」のCランクが15商品だった。「届け出のガイドラインに沿ったデータかどうか疑問が残る」として、販売元企業との「見解不一致」と判定した商品が6つあった。食品メーカー社員が、こんなケースを紹介する。
「ある健康食品会社がトクホとして申請した清涼飲料について、消費者庁は“安全性が確認されていない”という理由で許可しなかった。ところがその会社は、すでに同じ成分を含む食品を機能性表示食品として消費者庁に届け出て、受理されていた。安全性が認められなかった成分が、機能性表示食品では“体にいい”とされているのです」
では、トクホや機能性表示食品とどう付き合っていけばいいのか。
『「健康食品」ウソ・ホント』(講談社)の著者で群馬大学名誉教授の高橋久仁子氏が言う。
「トクホの小さな効果が大きな効果であるかのように宣伝されていることに気づいてください。さらに問題なのは、“トクホを摂っていればOK”と思い込み、健康のための基本的な努力を怠ってしまうことです。トクホに依存するのではなく、摂取することで“自分は健康体を目指しているんだ”という意思を日々再確認するために利用するぐらいがちょうどいい」
トクホ商品のラベルには、必ず「食生活は主食、主菜、副菜を基本に食事のバランスを」と表記するよう義務付けられている。健康効果を謳う文字よりかなり小さいが、そこに健康や長生きの真髄があるといえる。
※週刊ポスト2016年11月11日号