自主返納の制度は1998年に始まりましたが、まだ広く認知されていません。また、身近な身分証明書の筆頭である免許証を返納すると、本人確認のためのさまざまな手続きに支障をきたすと考え、二の足を踏む人も多かったんです」

 免許証を返納すると受け取れる『運転経歴証明書』は本人確認書類として使えるものの、以前は有効期限がたったの「6か月」だった。ところが、2012年4月の法改正で「無期限」に拡大され、使い勝手は格段によくなった。さらに最近では免許証の返納にはより大きなメリットがある。

「自治体にもよりますが、運転経歴証明書の保有者には商店街のポイントカードや割引券が発行されたり、タクシーやバス利用時の乗車料金の割引などが受けられます」(前出・鈴木氏)

 また、全金融機関の定期預金の金利優遇や宿泊施設の割引などが受けられることもある。いくつか例を挙げると、

・『帝国ホテル東京』直営のレストランやバー、ラウンジ料金が10%割引
・『イオン』の電子マネー『WAON』カードを無料進呈
・『はとバス』の定期観光コース料金が5%割引
・『明治座』公演入場券代が10%割引

 など、数多くの特典がある。鈴木氏はこう締めくくる。

「高齢者だからといって、一律返納させるのは制度的に難しいことですが、免許更新の機会を増やすといった対策も必要だと思います。今回のような痛ましい事故を受けて、改めて返納制度の活用を考えることが重要です」

 日本全体の高齢化が進む中、悲劇を繰り返さないためにも、自主返納の制度の正しい理解が求められている。

※女性セブン2016年11月17日号

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