正直ホッとするが、まずは第1ハードルを越えたばかりである。ハードルは3つ残っているのだ。
「で~、大腸がん。これも血便とかでてないから大丈夫です」
まだ診察室に入って20秒も経っていないが、早くも第2ハードルをクリアする。がんなんていう大問題なんだから、もうちょっと勿体ぶってユックリと話してほしい気持ちもあるが、ここまではとんでもない早さで話は進行していた。
しかし、このあまりにも早い展開が逆にオレには気になった。問題ない部分を早く進め、この後に登場する大問題に時間をたっぷりかけたい! そんな先生の時間配分があったりしての高速展開なのじゃないか? そんな邪推すらしたくなる。
「で、PSAですけど……」
きました、きました、きましたよ~ッ。このPSAっていうのが前立腺がんの検査なのだ。これが今回の肝といってもいい部分なのだ!
「腫瘍マーカーの値は……」
本当は次の言葉まで一気に畳みこむように話されたんですが、勿体つけるように、一度ここでセリフを切りまして、演出的レトリックでドラムロールを入れさせていただきます。
♪ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル……♪
さぁ、その値はァァァッ!?
「正常なんで問題なしッ、と」
やりました~!! しかし待て。本来、市のがん検診は肺がん、大腸がん、胃がんの3つ。今回はそれに追加して前立腺がん検査を受けたワケだ。となると、普通だったら、その検査の発表は肺がん、大腸がん、胃がんの3つも先にして、最後に前立腺がんじゃないのか? それなのに、なぜ胃がんが後回し? もしや、もしやァああああああ!