「で、胃がんは内視鏡検査をしたワケですが……」
“ですが”ときましたか、ですが、と!!
「さとうさん……あなた、胃がんは全然心配ないんだけど酒飲むでしょ? あと説明するけどガンマGTPの値がそうとう高いよ、50過ぎたら酒も控えないと。だから胃がそうとう炎症おこしてるわ。見て、この胃カメラの映像、ね~鬱血してる、ね~これ。だいたどのくらいのペースでお酒飲んでるの?」
「あの……毎日…です」
「50過ぎてんだから休肝日とらないと~。高すぎるよガンマGTP。GTOとGPTは特に高くないから今すぐどうこうってことはなくて、酒を控えれば数値も徐々にうんぬんかんぬん……」
前立腺がん検査の話は最後、オレの酒癖に起因する健康診断の結果にすべてを持っていかれた状態であった。もしがん検査に問題なければその日の夜はたっぷり酒を飲んでやろうというオレの計画もあえなく自粛ということにすらなった。
しかし! がん検査の問題なしがオレに与える精神的安堵は計り知れない大きなものであった。特に前立腺がん、この検査で問題がなかったということは大きい。
前立腺がんの権威・頴川晋医師の書かれた『前立腺がんは怖くない』によると、前立腺がんは一般的に進行の遅いがんだなのという。つまり一度問題がなければ、あとは毎年検査を受けていれば、たとえいつかPSA検査の数値に異常が見つかったとしても、その時点で治療を開始すれば、まさしく本当に“怖くないがん”なのである。
おそらくこれから先、前立腺がん検査も肺がん、胃がん、大腸がんと同じように、どんな自治体でもその検査費用に補助がなされる日がくるだろう。しかし、その補助がつくのを待つよりも、今、今日にでも検査を受けることが、どれだけ大きな安心となるか。
なにしろオレは今、とんでもない安心感に満ちているんですから。あ、酒はちゃんと控えるようにするってこと前提で……。
(了。全3回のご愛読ありがとうございました)