スター選手なら億単位の年俸を手にできるプロ野球の世界。しかし、成績次第で翌年の収入が大きく浮き沈みし、前年の収入をもとに算出される税金に苦しめられることも。そのため、様々な方法で税金対策をしているが、行き過ぎた節税が球界の不祥事となったこともある。1997年には名古屋のコンサルタントらが、プロ野球選手19人に架空の顧問料を申告させた脱税疑惑が発覚。10選手に有罪判決が下り、3~8週間の出場停止と制裁金のコミッショナー処分を受けた。
それだけ選手にとって「税金」が悩ましい問題ということでもある。球団サイドも様々な“ケア”をするようになってきた。明治大学から1985年にドラフト1位でヤクルトに入団した広澤克実氏が解説する。
「かつては選手の年俸を10等分し、球団との契約期間にあたる2~11月の各月に振り込むのが普通でしたが、最近は12等分して毎月の振り込みにすることが多くなった。収入が平準化されたほうが、一気に使い込んでしまうことが減るという気遣いです。“サラリーマン化”しているともいえるでしょう。
また、高額年俸選手には、前年の所得額をベースに所得税を先払いする予定納税を勧めることも多い。そうしておくと年俸が急に下がった時にはむしろ確定申告で還付を受けられるわけです」
近年は選手が資産管理やマネジメントを行なう個人会社を設立し、CM契約料などは法人のほうで受け取るスタイルも少なくない。
「本人や妻が役員報酬を分散して受け取るかたちにすると、選手個人の収入にするよりも税制上のメリットが大きい」(球団関係者)というのである。
そうなると今オフで一番気になるのは、球界最高年俸6億円から現役引退の道を選んだ広島・黒田博樹(41)の税金問題である。広澤氏はこういう。
「億プレーヤーになれば、さすがに稼いだ金をすべて使い切るなんてできませんよ(笑い)。6億円ももらっていれば税金について相談できる専門家やこれまでの蓄えもあるでしょう。心配はありません」
年俸が6億円からいきなりゼロになっても税金に困らない──それはそれでスターの証ということか。
※週刊ポスト2016年11月25日号