「すき家を運営するゼンショーホールディングスは、自前で国内に大きな牧場も持っています。そこで育てた牛の肉を余すところなく、傘下のスーパーやファミレスなどにも卸しています。
すき家で全店一斉に『黒毛和牛弁当』が提供できるのも、こうした川上から川下まで網羅した効果的な商品政策が機能している証拠です。高品質・割安感を追求した自由なメニュー構成ができる点で、すき家は牛丼チェーンの中でも抜きに出た存在になりそうです」(中村氏)
確かに同じゼンショーグループでは、500円以下の牛丼やうどんを提供している「なか卯」でも、9月から『ローストビーフ重(並790円)』など、高価格帯のメニューを徐々に増やしている。
問題は、従来のイメージを覆してしまうほど高額メニューで勝負をかけると、固定ファンすら逃がしてしまうリスクをはらんでいることだろう。『黒毛和牛弁当』を食べた消費者の中には、〈おいしかったけど、すき家で1000円を出してまた食べたいかと言われると……〉との声があるのも事実だ。
品質がよければ値段は関係ない──デフレ時代の代表企業がこうした“上客”を囲い込むのは容易なことではない。