回転寿司の「くら寿司」が、“牛丼を超えた『牛丼』(税込み399円)”を販売して話題を呼んでいる。
ネット上では、〈魚介類を使ったダシで牛丼の甘みが増し、クセになりそう〉との声があがるなど評判は上々だが、本家の牛丼専門店では、定番メニューの脇で1000円を超える高価格商品にも力を入れ、新たな顧客ニーズを満たそうという動きが広がっている。
11月17日より1080円の『黒毛和牛弁当』を販売しているのは、大手牛丼チェーンの「すき家」だ。
来年1月ごろまでの期間限定で、1店あたり1日20食程度と数量も決まっているとはいえ、消費者からは〈普通の牛丼より脂身が少ない割に肉は柔らかく、値段通りの高級感が味わえた〉との感想が聞かれた。
すき家のライバル、「吉野家」も、すでに国会議事堂店と羽田空港国際ターミナルビル店の店舗限定で1240円の『牛重』を出して、普段あまり牛丼を食べないシニア層の注文を伸ばしている。
デフレ回帰、輸入牛肉の価格低下といった経営環境を考えれば、牛丼チェーンは再び“低価格競争”に突入してもおかしくないのだが、いまは様子見といったところ。一体なぜなのか。外食ジャーナリストの中村芳平氏がいう。
「頻繁に牛丼を食べる若年層が減っていることに加え、ステーキ人気に象徴されるように高品質の肉を食べる文化が定着していることが大きい。いつまでも外国産の安いバラ肉に頼って300円台の勝負をしていても先行きが見通せないのです」
もちろん、高額メニューを揃えて客単価のアップ→増収に繋がれば、深刻な人手不足や営業時間の短縮を抑えることができる。“ワンオペ(一人勤務)”体制が問題視され、いまだに深夜営業を再開できていない店舗も残る「すき家」にとっては、高額商品のヒットは願ったり叶ったりといえる。
だが、「すき家の高付加価値戦略は『引き出し』が多く、まだ伸びしろがある」と指摘するのは、前出の中村氏だ。