俺は運輸大臣の時(1994~1995年、自社さ政権)、日米航空交渉でアメリカの言い分を全部蹴った。当時の外務省や外相の河野洋平が「頼むからアメリカの言う通りにしてくれ」と懇願しても一切無視して、結果は100%日本の勝利だった。
今も外務省はアメリカ一辺倒だ。しかもトランプ氏の勝利を予測できず、選挙中に晋三総理とヒラリー氏の会見しかセットせずトランプ陣営は不快感を抱いていた。まあ、俺が乗り込んで敵対心を解いておいたけどな(笑)。その後、トランプ氏は阿呆なことは言わなくなっただろ?
晋三総理からも電話があったから、「トランプ氏はレーガン元大統領を崇めている。総理は父親が外相時代にレーガンと会ったはずだからその話題を絡めればいい」と助言したら「はい、わかりました」と言ってたね。
振り返れば戦後の日本の保守派は、ずっとアメリカの言いなりじゃないか。2015年に成立した安保法制も完璧なアメリカ追従だよ。自衛隊がわざわざ外国まで出かけていって米軍と一緒に戦争をする話なのだから。日本は敗戦とその後の占領政策によって骨の髄までおかしくなってしまった。
せっかくトランプ氏が「アメリカは世界の警察官をやめる」と在日米軍の撤退をほのめかしているのだから、日本はこの機会を利用して自主防衛に舵を切ればいい。
中国が軍拡を進めるなか、極東で米軍の存在感が減ることを心配する声もあるが、その発想は前提が間違っている。現在はミサイルが国防の大部分を担う時代であり、軍艦と軍艦が対峙した昔とは違う。
ミサイル時代を見越して日米が軍事協力をすべきなのに、アメリカは旧時代の軍事戦略のまま沖縄で好き放題やっている。沖縄については、基地返還も見据えて交渉すべきだ。
尖閣問題だって、あんな岩山ひとつ取るために戦争なんて仕掛けてこないよ。本気で占領して日本と戦争になったら、中国の国益を大きく損なうのだから、尖閣は中国の国内向けのデモンストレーションに過ぎない。
【PROFILE】1936年広島県生まれ。東京大学経済学部卒業後。1962年、警察庁に入庁。1977年に退官。1979年、衆議院議員選挙に自民党から立候補し初当選。運輸大臣、建設大臣を歴任。2005年には自民党を離党し、国民新党を結党。2009年、国務大臣金融・郵政改革担当に就任するも、2010年6月に辞任。現在、無所属。
※SAPIO2017年1月号