国際政治学者の三浦瑠麗氏
木村:アリゾナの国境のフェンスを見てきたんですが、2マイルくらいしかなく、その先は何もなくて自由に出入りできる(笑)。
現地の地図には無数の点が打ってあり、これは何だと聞いたら、食糧と水が置いてある場所だと言うんですね。NPO団体が砂漠を渡る移民のために置いている。ところが、そのNPOにお金を出しているのがメキシコのマフィア。麻薬密輸者が、水や食糧を補給するための中継点を、ポリコレを旗印に掲げるNPOを利用して構築しているんです。
三浦:トランプ支持は白人だけではない、という点も見落としてはいけません。フロリダ州オーランドで町を歩いている人に無作為にヒアリングしたら、メキシコ系三世までほとんどのヒスパニック系がトランプ支持でした。
木村:革命から逃げてきたキューバ系は、カストロと握手したオバマが許せないと言っていました。また、すでにアメリカに住んでいる移民は、新たな移民が増えると自分たちの仕事が奪われるから移民反対なんです。
三浦:既得権化するのが早いですよね。彼らのメンタリティは完全にアメリカ人です。アメリカでは多様化と同化が同時進行している。
●きむら・たろう/1938年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。NHKで記者、キャスターを経て、フリーに。フジテレビで数々の報道番組のキャスター、コメンテーターを歴任。
●みうら・るり/1980年生まれ。東京大学農学部卒、同法学部政治学研究科修了(法学博士)。東京大学政策ビジョン研究センター講師。著書に『日本に絶望している人のための政治入門』(文春新書)など。
※SAPIO2017年1月号