ふるさと納税は、はじめは豪華な返礼品を目当てに始める人も多いだろう。断っておくが、返礼品を出す作戦は決して悪くない。地場産業の活性化には大きな応援になっている。自治体にとっても、自分の町の“売り”は何か真剣に考え、全国に知ってもらうためのきっかけになる。だが、本当のふるさと納税は、これをきっかけにして、どれだけその町を応援したいと思わせるかがカギを握っているように思う。
同じ十勝地区の池田町でも、有名な「十勝ワイン」や「いけだ牛」などの魅力ある返礼品をそろえている。勝井勝丸町長も、自慢の特産品をアピールした。その一方で、町に残してきた空き家を点検したり、お墓の掃除や草むしりなどを、返礼として行なっている。かつて町にいた元住民とのつながりを大切にしているのだ。こうした人とのつながりを、そこで生まれ育った人だけでなく、これまで縁もゆかりもなかった人との間にもつくるにはどうしたらいいのか。各自治体とも必死である。
そもそも税金は、納税者の意思とは関係なしに、自動的に吸い上げられる。しかも、自分の納めた税金がどんな使われ方をしているのか具体的に実感できないことがほとんどだ。
少子化は深刻な問題だといいながら、なかなか改善しない。教育格差も広がるばかりだ。景気もよくならない。非正規雇用は拡大し、格差も広がっている。実質賃金は減るばかりだ。目の前の問題はなかなか解決しないのに、税金ばかり取られるという感覚は否めない。
税金には、「共感」と「納得」が大事だ。国や自治体がえがくビジョンに共感することができれば、納得して納税することができる。その点、ふるさと納税は、自治体の町づくりに「共感」し、自分の意思で寄付するのだから「納得」しやすい。寄付の使い道を指定することもできるのだ。
「こんなおいしいものをつくる地場産業を応援したい」「子育てしやすい環境を整えてもらいたい」「高齢になっても、住みやすい町をつくってもらいたい」
そんな気持ちと寄付が町を育てる。やがて、そこで暮らしてみたいというように心を動かすことができれば大成功だ。