国内

天ぷら屋閉店の貼り紙に客が寄せ書き 東京の商店街の片隅で

シャッターが閉じられた天ぷら屋さん

 東京の片隅で小さな天ぷら屋さんが店を閉じた。年期を感じさせるシャッターに馴染み客たちの寄せ書きが貼られた。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が語る。

* * *
「おじさん、いつも『ワー、キレイな人!』と声をかけてくれて、ウソとわかっててもうれしかったです。ステキなおじさん、待ってます??」

「↑他の女の人にも言ってたんですね(笑) おいしい天ぷらありがとうございました。元気になってください」

 店先に貼られた閉店を知らせる貼り紙。そこに、店主へのメッセージがたくさん書き込まれています。ここには長年親しまれた天ぷら屋さんがありました。メッセージを書くスペースが足りなくなって、新しい紙も並べて貼ってあります。

 東京・豊島区の都電沿いにある商店街。およそ30年前、私は近くにあった風呂無しトイレ共同のアパートに住んでいました。夕方になるとお客さんがひしめき合うにぎやかな商店街の一角にあったこのお店で、何度か天ぷらを買った記憶があります。安くておいしくて、人のよさそうなおじさんが「いらっしゃい!」と元気に迎えてくれました。

 所用があって久しぶりにその商店街を訪れ、多くのお店がマンションに姿を変え人通りも減ってしまった光景に寂しさを覚えていたときに見つけたのが、この貼り紙です。店先で天ぷらを揚げるおじさんの写真。その下の紙にはこう書かれていました。

「写真を勉強していると言ったら、良いの撮れたらちょうだいね、と言ってくれたのに、すみません。これが一番いい写真でした。毎朝通るとき声をかけてくださりうれしかったです。ありがとうございました。○○○アヤ」

 ひとつひとつのメッセージを読むと、このお店の天ぷらとおじさんがいかに近所の人たちに愛されていたかが、ひしひしと伝わってきます。

「昭和30年代から昭和40年代までは、てんぷら買うのに夕食時には1時間も待たされました。あの当時が懐かしい」

「えび、キス、あなご、なす、レンコン…みんな大好きでした。ありがとうございました。『お勘定640万円です』が忘れられません。お供より☆」

「天ぷらのおじちゃんへ 小学生の時からいつも前を通ると楽しく話しかけてくれて、嬉しかったです。なんだかとってもさみしいです。早く元気になってください。お大事に」

関連記事

トピックス

17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
本誌『週刊ポスト』の高利貸しトラブルの報道を受けて取材に応じる中条きよし氏(右)と藤田文武・維新幹事長(時事通信フォト)
高利貸し疑惑の中条きよし・参議院議員“うその上塗り”の数々 擁立した日本維新の会の“我関せず”の姿勢は許されない
週刊ポスト
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者
【新宿タワマン刺殺】ストーカー・和久井学容疑者は 25歳被害女性の「ライブ配信」を監視していたのか
週刊ポスト
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
高橋一生と飯豊まりえ
《17歳差ゴールイン》高橋一生、飯豊まりえが結婚 「結婚願望ない」説を乗り越えた“特別な関係”
NEWSポストセブン
西城秀樹さんの長男・木本慎之介がデビュー
《西城秀樹さん七回忌》長男・木本慎之介が歌手デビューに向けて本格始動 朝倉未来の芸能事務所に所属、公式YouTubeもスタート
女性セブン
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
女性セブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
離婚のNHK林田理沙アナ(34) バッサリショートの“断髪”で見せた「再出発」への決意
NEWSポストセブン
フジ生田竜聖アナ(HPより)、元妻・秋元優里元アナ
《再婚のフジ生田竜聖アナ》前妻・秋元優里元アナとの「現在の関係」 竹林報道の同局社員とニアミスの緊迫
NEWSポストセブン
大谷翔平(左/時事通信フォト)が伊藤園の「お〜いお茶」とグローバル契約を締結したと発表(右/伊藤園の公式サイトより)
《大谷翔平がスポンサー契約》「お〜いお茶」の段ボールが水原一平容疑者の自宅前にあった理由「水原は“大谷ブランド”を日常的に利用していた」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田首相の脱法パーティー追撃スクープほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田首相の脱法パーティー追撃スクープほか
NEWSポストセブン