「前立腺がんで手術した場合、ステージI~IIIまでだと5年生存率が100%。離れた部位への転移が認められるステージIVだけは数字が下がります。
『ステージIで手術なしの5年生存率は96%』という情報だけを知ってもあまり意味はなく、前立腺がんでは転移があるかが生死にかかわるのだとわかります。他のがんについても、データの一部だけ見てもほとんど意味がありません」(桑満氏)
2016年7月2日号の『週刊現代』では〈胃がん、食道がん、大腸がん、肺がんの8割は手術をしないほうがいい〉と題された記事もあった。
匿名の事例を挙げながら、手術は体力の低下など、高齢者の生活に与える影響が大きいと警告している。ただ、タイトルにある「8割」という数字については、記事の末尾に〈安易な手術は8割方、後悔の種になるということを肝に銘じておきたい〉とあるのみだった。
表で紹介したデータで胃がん、大腸がん、肺がんについて、手術の有無による5年生存率の違いを調べると、ステージI~IIIでは、手術をしたほうが5年生存率は高いことが読み取れる。
「多くのがんで、ステージI~IIIまでとステージIVを分けて考えるべきです。ステージIVまで進行した場合は、外科的な手術も『やらない』という選択肢が有力になってくる。転移が広がりすぎていたり、体力がなくなっていたりして、体が手術に耐えられなくなっていることがあるからです」(桑満氏)
大腸がんや胃がんのデータでは、ステージIVで手術なしの「件数」が一気に増えているのは、そうした事情があるからだ。
※週刊ポスト2017年1月1・6日号