国際情報

中央アジアの独裁者 大国とわたり合う「遊牧民のリーダー」

中央アジアには独裁者が多い(アフロ)

 ソ連崩壊により誕生した中央アジア諸国。以来30年近くを経た今も、共産主義の時代に確立された中央集権的な政治体制が生き続けている。君臨するのは、旧体制下で出世し、崩壊後も横滑りで権力を握った「独裁者」たちだ。ソ連という重しが外れて独裁者の強権ぶりは増したが、市場経済で物質的な豊かさを得た国民の支持は厚い。

 大国とわたり合う「遊牧民のリーダー」たち4人を紹介しよう。

【大国との友好を保持して長期政権】
●ナザルバエフ大統領(76歳)/カザフスタン共和国/統治歴26年
 1997年には首都を南部のアルマトイからアスタナに遷すなど、「カザフ人意識」を高めるための政策を邁進。中央アジアの盟主を自認。

〈“俺流”独裁術〉
・憲法の「三選禁止」は初代ナザルバエフには適用されず。
・エリート養成大学に日欧米から教授陣を招聘し「国際化」。
・2017年アスタナ万博開催、2022年冬季五輪立候補など外交を多角化。

【巧みな外交術で「強権支配」を全う】
●カリモフ大統領(享年78)/ウズベキスタン共和国/統治歴26年
 反体制派やイスラム勢力への弾圧も、巧みな外交術により国際社会から非難されることはなかった。2016年9月に急逝。

〈“俺流”独裁術〉
・「議会解散権」や「裁判官の任免権」まで持ち「三権」を掌握。
・“国民投票の圧倒的賛成”で大統領の任期延長・多選も思うがまま。
・反政府デモ弾圧も「対テロ戦争」を掲げて他国からお咎めなし。

【「終身大統領」化で独裁強化】
●ラフモン大統領(64歳)/タジキスタン共和国/統治歴24年
 2016年5月、ラフモン大統領の独裁体制を強化する憲法改正が国民投票により可決した。近年は軍高官によるクーデター未遂も起きて政情不安懸念も。

〈“俺流”独裁術〉
・国民投票による憲法改正で現職大統領任期の制限を撤廃。
・同じく憲法改正で「権力世襲」への道を開いた。
・自分と家族には刑事免責の終身特権も。

【先代・ニヤゾフの「個人崇拝」を模倣】
●ベルディムハメドフ大統領(59歳)/トルクメニスタン/統治歴9年
「中央アジアの金正日」と呼ばれた先代ニヤゾフを継承。近年、個人崇拝を進める歯科医出身の異色の独裁者。

〈“俺流”独裁術〉
・先代・ニヤゾフ終身大統領の「個人崇拝政策」を改革しつつ自らを神格化。
・首都中心部に全高21m「黄金騎馬像」や「巨大肖像画」建設。
・天然ガス産出の利益で「治安機関強化」「国民の光熱費無料」。

監修■六辻彰二(国際政治学者)

※SAPIO2017年1月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
警視庁がオンラインカジノ店から押収したパソコンなど(時事通信フォト)
《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば”安心”だと思った」理由とは?
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン