ビジネス

注目の自動車テクノロジー 自動運転、EV、IoTの未来

手離し運転が当たり前になる時代はくるか(写真:アフロ)

 究極のエコカーと呼ばれる「電気自動車(EV)」や「燃料電池車(FCV)」、人や障害物を察知して止まる「自動制御」、ハンドルを握らなくてもクルマが動き出す「自動運転」──。いま、世界中の自動車業界は新技術をめぐる覇権争いで激しい火花を散らしている。

 いったいクルマの未来はどうなっていくのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏に、2017年に注目の自動車テクノロジーと、その行方を解説してもらった。

 * * *
(1)自動運転

 Googleがハンドルのないセルフドライビングカーを公開したのは2014年。それを機に、世界の自動車メーカーが秘密裏に進めていた自動運転の研究成果を次々に公開し、今や自動運転はクルマの研究開発の中でも最もホットなジャンルとなっている。2017年も引き続きこの研究は、自動車工学のなかで最大の注目を浴び続けるだろう。

 最新の自動運転の区分けは何もないレベル0から完全自動運転のレベル5までの6段階。このうち、普段はスロットル、ブレーキ、ステアリングの3つの操作をクルマが自律的に行うレベル3の市販車を2017年に投入すると、ドイツのアウディが発表した。

 新システムが採用されるのは同社のセダンのトップモデル「A8」の次期型で、高速道路での渋滞区間走行時限定で、手放し運転が可能になるという。が、これは何もアウディの専売特許ではなく、類似のシステムは今後、各メーカーから続々と飛び出してくるだろう。

 自動運転について、日本陣営が後れを取っているという報道が散見されるが、とくに上位メーカーは昔からこの技術を熱心に研究しており、言うほどの後進性はない。

 本当に世の中に自動運転を投入すべきかどうかということについて疑念を持っていたのと、コンピューティングの進化を甘く見ていただけで、本気でかかればすぐに最先端をキャッチアップできるものと思われる。

 日産は早くから海外の有力大学やラボラトリーとのコラボレーションを進めてきた。トヨタもここにきて、海外との連携強化を強めている。ホンダはGoogleから分社した自動運転開発会社ウェイモとのコラボを検討と発表している。

 世界中の自動車メーカーやIT企業が参画し、急速に進む自動運転の研究。いかにもハンドルも何もない完全自動運転車が路上を走り回る日が遠からずやってくると煽るようなニュースがしょっちゅう飛び出しているが、クルマやソフトウェアのエンジニアの大半はそうは考えていない。

 完全自動運転車がもし実用化されれば、これは世界のモビリティ革命になる。免許がない人でも酔っ払った人でもクルマに乗ることができ、クルマの中でシートベルトだけしていれば、新聞を読もうが映画を観ようが仕事をしようが昼寝をしようが自由。

 通る道にも制限はなく、もし事故が起こっても、自動車側の原因分についてはメーカーが全面的に責任を負ってくれる。そんなクルマが普通の人が買える価格で販売されれば、運転免許もいらなくなるし、ハンディキャップを持つ人や高齢者もクルマで自由に行き来できるようになる。これは夢いっぱいだ。

 2年前、自動運転に関する国際的ガイドラインの策定に関わっている自動車業界関係者のひとりは、

「本当にそうなるには50年スパンの長い長い年月がかかるという見方が大勢を占めていて、少なくとも近い将来にそれが実現できるという人は、自動運転推進論者を含めてほとんど誰もいない。それをやれるようになるかどうかのカギは、道路がクルマを誘導する外部管制方式を自律走行と併用できるような時代が来るかどうかだ」

 と語っていた。その人物に話を聞いてみたところ、今も認識はまったく変わっていないそうだ。

 用途、地域限定の自動運転車は出てきても、今のクルマと同じ使い方をドライバーなしでこなせるようなものが出てくるのははるか先。ただ、運転支援の高度化の範疇にとどまる自動運転も、認知、判断、操作の運転3要素におけるミスをカバーし、事故を防ぐという一点に限ってもバリューはきわめて大きい。

 また、自動運転は運転の疲労軽減にも効果があり、また驚くことに、作り方によってはクルマの楽しさをむしろ増やすポテンシャルも秘めている。

 筆者は2016年夏、メルセデス・ベンツの大型SUV「GLS」で東京~鹿児島を走ってみた。そのクルマにはディストロニックプラスという先進安全システムが装備されていたが、果たしてそれを作動させるとドライバーのやることがなくなって運転が退屈になるかと思いきや、さにあらず。

 コンピュータ制御によってクルマの直進性は増し、動きはスムーズになり、また運転操作の負担が小さくなったことで景色への注意力は大幅に増した。作り方によっては自動化は、クルマをむしろ楽しいものにするのに役立つという方向性を見た気がした。

 2017年にはそんな自動運転に関する新しい技術が多数登場するだろう。また、それを巡る有力企業同士の合従連衡も注目に値する。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン
佳子さまの“ショッキングピンク”のドレスが話題に(時事通信フォト)
《5万円超の“蛍光ピンク服”》佳子さまがお召しになった“推しブランド”…過去にもロイヤルブルーの “イロチ”ドレス、ブラジル訪問では「カメリアワンピース」が話題に
NEWSポストセブン
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
結婚を発表したPerfumeの“あ~ちゃん”こと西脇綾香(時事通信フォト)
「夫婦別姓を日本でも取り入れて」 Perfume・あ〜ちゃん、ポーター創業の“吉田家”入りでファンが思い返した過去発言
NEWSポストセブン
(写真右/Getty Images、左・撮影/横田紋子)
高市早苗首相が異例の“買春行為の罰則化の検討”に言及 世界では“買う側”に罰則を科すのが先進国のスタンダード 日本の法律が抱える構造的な矛盾 
女性セブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン