これまで数々の職業を演じ、その職業に対して、世間が価値観を変えるほど大きな影響力を持つ木村拓哉(44才)。
今回1年半ぶりの連続ドラマ『A LIFE~愛しき人~』(TBS系)で演じるのは、卓越した腕を持つ職人かたぎの外科医だ。木村にとっての“職人”とは何か…アイドル、俳優としてさまざまな物語を紡いできた彼の、2017年、“今”この瞬間を切り取る。
「今は、スイッチがひとつずつオンになっていっている感じですね。カチッカチッと。例えるなら、飛行機がテイクオフする直前のコックピットかな」
1月15日スタートの新ドラマの放送を控えている木村拓哉は“その瞬間”に向かう期待感に充ち満ちていた。『A LIFE~愛しき人~』は彼にとって1年半ぶりの連続ドラマとなり、職人外科医の沖田一光を演じる。
「スイッチを入れてくれるのは、脚本の橋部(敦子)さんやスタッフ、共演者のみなさんとのディスカッションや、病院での手術見学、そして糸結びの練習…」
糸結びとは、手術で縫合や止血のために血管を糸で結んだりする技術。
「糸を結ぶっていうのは、命を結ぶことなんですよね。これが早く正確にできるかどうかが手術時間にかかわってくるし、予後にも影響する。実際のドクターはこの練習を欠かさないそうです。まさしく、職人ですね」
木村が思う職人とは…。
「まず、責任なんじゃないかな。質とか量じゃなくて、求められているものをしっかりと感じ取る受け皿を自分の中に持っていること。そして『これでOK』というラインがない。現状でベストのものを作るんだけど、次はこれより絶対にいいものを作るんだという思いがある。それが職人なんだと、ぼくは思っています」
そのイメージは、木村拓哉その人にも重なる。
「自分の中に職人性があるか? うーん、どうだろう…。あるとは思うけど、自分で『あります! こういう部分です』と言うべきものではないですよね。一緒にものづくりをするかたや、見てくださるかたが感じ取ってくれることだと思う」
私たちはこれまで、木村拓哉という存在を通して、さまざまな物語をリアルに体験してきた。それは彼が表現する役柄が“演じる”という枠を超えて、その人物の呼吸までもが感じられるものになっているから。