芸能

「キネ旬ベスト・テン」映画にみるキーワードは「逆境」

キネ旬日本映画1位の『この世界の片隅に』(公式HPより)

 コラムニストでデイトレーダーの木村和久氏が、近頃気になるニュースをピックアップし独自の視点で読み解きます。今回は昨年の映画で気になった作品にクローズアップ。

 * * *
 2016年のキネマ旬報ベスト・テン&個人賞が発表されたので、そのデータをもとに、個人的に好きな3本を紹介したいと思います。ベスト・テン、個人賞、外国映画賞のラインナップから、導き出されるキーワードは「逆境」です。人間いろんな困難な状況に陥り、そこからいかに這い上がるかということはすごく大事です。どの作品も観たら「頑張ろう!」という気持ちが、むくむく湧いてくるはずです。

◆日本映画ベスト・テン1位『この世界の片隅に』

 よくぞやってくれましたと、拍手喝さいです。多くの映画賞は、アニメーション部門を分けて受賞対象にしますが、キネ旬は全部ひっくるめてのベスト・テンですから、重みが違います。

 逆境的には、まず制作側の資金難があり、クラウドファンディングでお金を集めました。エンドロールには、お金を出してくれたたくさんの方の名前が延々とアップされます。全く知らない人々の名前の羅列だけで、なぜか目がしらが熱くなってきました。封切りは63館から。ローバジェットの日本映画、まだ捨てたもんじゃないですね。

 そしてもうひとつの逆境は「のん」の活躍です。契約等の問題で、本名すら名乗れなくなり、仕事激減の「のん」がチャレンジしたのは、ナレーションです。主人公のすず役の声を天衣無縫に演じ、実にハマっておりました。こちらにも、何度泣かされたことやらです。

 映画の内容はいまさら言うまでもないですが、驚くべきは、戦前からの話なのに観ているのは圧倒的に若い人々です。昭和34年生まれの私は、親や親せきから戦争の苦労話を、たくさん聞かされました。それが今、世代が代わって、伝えるべき語り部がいない。もちろん『火垂るの墓』や『はだしのゲン』などの素晴らしい作品もありますが、個性がやや強い。今の若者は、おじいさんやおばあさん世代の日常を淡々と見たかったのではないでしょうか。そういうマーケティングに、図らずもマッチしたのかなと。後世に残る名作ですね。

◆助演男優賞 竹原ピストル

 竹原ピストルは、元々はライブ中心のミュージシャンですが、松本人志監督の映画『さや侍』で托鉢僧役で出て、パワフルな歌唱力を披露し存在感を示しました。歌の方は住友生命の1UPのCM挿入歌『よ~、そこの若いの』がヒットし、松本人志は「紅白に出てもおかしくない」と言っています。ほかにも『LIVE IN 和歌山』や『ドサ回り数え歌』など、心温まる名曲を多数生み出しています。

 そんな彼が西川美和監督の『永い言い訳』で、本木雅弘と共演します。映画は交通事故で妻を失った家族の再生物語で、売れっ子作家役が本木雅弘、対照的なトラック運転手に竹原ピストルです。本木と竹原は、バスツアーで同時に妻を失います。そこでふたりは、家庭を失った喪失感をカバーするために交流が始まり、絆を深め合うのです。

 劇中での竹原の存在感は圧倒的です。西川監督も「演技をしていることに、気づかない」と語っています。最初から妻を失ったトラック運転手が、そこにいたのです。今まで積み重ねて来た映画の役作りを、根底からくつがえす存在感に驚愕し、本木雅弘は竹原ピストルの熱心なファンとなります。

トピックス

報道陣の問いかけには無言を貫いた水原被告(時事通信フォト)
《2021年に悪事が集中》水原一平「大谷翔平が大幅昇給したタイミングで“闇堕ち”」の新疑惑 エンゼルス入団当初から狙っていた「相棒のドル箱口座」
NEWSポストセブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
雅子さまは免許証の更新を続けられてきたという(5月、栃木県。写真/JMPA)
【天皇ご一家のご静養】雅子さま、30年以上前の外務省時代に購入された愛車「カローラII」に天皇陛下と愛子さまを乗せてドライブ 普段は皇居内で管理
女性セブン
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
稽古まわし姿で土俵に上がる宮城野親方(時事通信フォト)
尾車親方の“電撃退職”で“元横綱・白鵬”宮城野親方の早期復帰が浮上 稽古まわし姿で土俵に立ち続けるその心中は
週刊ポスト
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者
【新宿タワマン刺殺】ストーカー・和久井学容疑者は 25歳被害女性の「ライブ配信」を監視していたのか
週刊ポスト
東京駅17番ホームで「Zポーズ」で出発を宣言する“百田車掌”。隣のホームには、「目撃すると幸運が訪れる」という「ドクターイエロー」が停車。1か月に3回だけしか走行しないため、貴重な偶然に百田も大興奮!
「エビ反りジャンプをしてきてよかった」ももクロ・百田夏菜子、東海道新幹線の貸切車両『かっぱえびせん号』特別車掌に任命される
女性セブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
高橋一生と飯豊まりえ
《17歳差ゴールイン》高橋一生、飯豊まりえが結婚 「結婚願望ない」説を乗り越えた“特別な関係”
NEWSポストセブン
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田首相の脱法パーティー追撃スクープほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田首相の脱法パーティー追撃スクープほか
NEWSポストセブン