――「白い赤福餅」のニュース、すごい盛り上がりですね。
「おかげさまで、ありがたいことです。三重県で初めて開催される菓子博ですから、赤福としても何かできないか。そう考えて、思い切って作ることにしました。お茶を使った餅はどうかとか、当初はいろいろな案があったんですけど、見栄えや味の点で納得のいくものができず、白あんで行こうということになりました」
――好評なら、今後は「白い赤福餅」も新しい定番商品になっていくんでしょうか。
「いや、それはありません。あくまでも菓子博限定です」
――白い赤福餅ができたとなると、いつの日か「青福」や「黄福」が登場する可能性は?
「ハハハ、面白いですけど、それもないですね」
――ですよね。引き続き不躾を承知での突っ込みですけど、今回の「祝盆」について、紅白じゃなくて黒白じゃないか、という声が出てきたらどうしましょう。
「うーん、そうですね、そこは『赤』福ということで、ぜひ『紅白』に見立てていただけたらと。ちなみに、赤福の名は『赤心慶福』(赤子のような、いつわりのないまごころを持って自分や他人の幸せを喜ぶ)の言葉から二文字をいただいたと言い伝えられています」
――失礼いたしました。そんなどうでもいいイチャモンをつける人は、赤福ファンにはいませんね。もちろん子どもの頃から赤福に親しんできた私たち三重県生まれの人間には、脳内で瞬時に自動変換されて、ちゃんと赤と白に見えます。ところで、濱田さんは試食なさっていると思いますけど、白い赤福餅のお味はいかがでしたか?
「まだまだ改良を続けていく予定ですが、従来の赤福餅とはまったく違うおいしさがありましたね。比較すると、ややあっさりした味でしょうか。食べ比べることで、あんこの魅力をより深く感じていただけると思います」
――(ジュルジュル……)。もしかしたら菓子博と聞いて、デパートの催事場のお菓子フェアぐらいに思っている人もいるかもしれません。そんなもんじゃないんだ、すごいイベントなんだってことを言ってやってください。
「菓子博は約4年に1度のお菓子の祭典です。今回は三重県営サンアリーナ(註:伊勢市にある超でかいコンベンション施設)を中心とした会場に、日本全国や世界から1800種類のお菓子が集結して、60万人の入場を見込んでいます。食べる楽しみはもちろん、見て知って体験して、幅広く楽しんでいただけるかと。お菓子は人と人との縁を取り持つものだし、お菓子のまわりには必ず笑顔があります。ぜひ、ご家族やお友達といらしていただいて、お菓子の魅力を満喫してください」
会場では、明治時代の味をイメージして作った「復刻版 赤福餅」(12個入、税込1,100円)も販売されます。当時、赤福餅のあんは黒砂糖を使って作られていたそうで、黒糖味のあんはコクや甘みが強いのが特徴だとか。
お菓子は、食べないと生きていけないわけではありません。だからこそ人生に欠かせない大切な喜びを感じさせてくれるのが、その役割であり真骨頂。大人としての余裕とは何か、人生を楽しむとはどういうことか、生きる意味とは何か。たくさんのお菓子に囲まれながら、きっとそんなことも感じられることでしょう。