1996年の秋季キャンプ(撮影/山崎力夫)
「ミスター」として愛され続けた長嶋茂雄さんが、6月3日、89歳でこの世を去った。プロ野球で選手・監督として華やかな道を歩み続けた長嶋さんだが、デビュー戦では国鉄の“カネやん”こと金田正一さんを相手に4打席4三振を喫したこともよく知られている。のちにプロ通算400勝という記録を打ち立てる大投手に抑え込まれ、苦いプロデビューだったのだ。
1958年4月5日、後楽園球場で行なわれた巨人対国鉄戦には、東京六大学のホームラン記録(当時)を持つ“神宮のスター・長嶋”と、巨人キラーとして知られた“国鉄の天皇・金田”の対決を一目見ようと、4万5000人の大観衆が集まった。
投手・金田が打者・長嶋に投げた球は全部で19球。バットに当たったのはよけ損ねて当たったファウルの1球だけ。見逃しのストライクが2球、空振りのストライクが9球。4連続三振に切って取られた。この「デビュー戦4連続三振」は広く知られたエピソードだ。
ただ、長嶋さんの巨人での第二次政権中(1993~2001年)、本誌・週刊ポストで「誌上総監督」として連載していたカネやんは、長嶋さんのデビュー戦についてこう語っていた。
「(三振は)4連続じゃなく5連続だよ。翌日も長嶋が出てきた場面で、志願してリリーフのマウンドに上がったのよ。そこでも三振だったからな」
豪快に笑い飛ばすカネやん。そうしてデビュー戦でカネやんに抑え込まれた長嶋さんは、22打席目に初本塁打が出るまで快音を響かせることができなかった。