なぜ、そういう制度になっているのか? 苦労して探し出して採用した社員は、余人をもって代えがたい人材だからだ。優秀な人材は採用が難しい上、会社になじむために最初の数年は大きな投資が必要であり、そうした多大な初期投資をした優秀で貴重な若い人材が出産や子育てのために辞めてしまったら、会社にとって非常に大きな損失となる。
たとえ途中で2~3年休んだとしても、30~40年の勤務スパンで考えれば、女性も男性も好きなだけ育休が取得できて自由に復帰もできるという制度にしたほうが、社員にも会社にもインセンティブがあるのだ。
日本企業の場合、能力のない人間や生産性の低い人間に長い有給休暇を取られたら会社も周囲の社員も納得できないという問題が出てくるかもしれないが、それは入社試験の時に毎年決まった人数を、優秀な人材かどうかを厳しく見定めず、出身校の知名度や偏差値だけで目をつぶって十把一絡げで採用しているからだ。
かたや欧米企業の場合は1人ずつ時間をかけて面接し、経営陣が本当に優秀だと判断した人材しか採用しない。しかも、採用後の社員教育に売上高の10%前後を使っている企業が少なくない。だから、そういう大きな初期投資をした貴重な人材を引き留めるため、懸命に努力しているのだ。
※週刊ポスト2017年2月3日号