「自分たちの生活はめちゃくちゃにされた」と、モスルで警官だった男性はいう。彼の弟は携帯電話を使っているのを見つかり、スパイだと言われて、頭に1発、胸に4発撃ちこまれて殺された。「まだ100人近くの親戚がモスルに残っている。怖くてしょうがない」と語った。
「モスルは地獄だ」という避難民もいた。だが、ハーゼル難民キャンプの生活も過酷だ。
「モスルよりはマシだが、自由のない難民キャンプにはいつまでもいたくない。はやく平和になって、うちに帰りたい」
ぼくたちJIM-NETは、イラク戦争後から、病気や戦争で傷ついた子どもたちの医療支援を続けてきた。2003年にアメリカが中心になって起こした戦争は、いまのISが台頭する情勢を生み出す一因をつくった。
昨日より今日、今日より明日がもっとよくなるように、支援活動を続けてきたが、イラクの治安は悪化し、病気を抱えた子どもにとってますます過酷な状況になってきている。
今後も、ナナカリ病院など4つの病院に支援を続けたり、診療機能をもつ車両で難民キャンプを回るモバイルクリニックを展開していくが、それだけでは追いつかない現状がある。だが、あきらめるわけにはいかない。
JIM-NETでは、イラクの病気の子どもたちを救うため、チョコ募金を呼び掛けている。1口2000円の寄付をしてくれた人には、チョコレート4缶をプレゼントする。チョコレートは六花亭製、チョコ缶には、イラクの白血病の子どもたちの絵がプリントされている。
いま世界中でテロが横行し、不穏な空気が流れている。平和を考える糸口としても、ぜひ、たくさんの人に協力をお願いしたい。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『死を受けとめる練習』『遊行を生きる』。
※週刊ポスト2017年2月3日号