たとえば、最初に手にした魚「モイ」は、いまもさまざまな角度から試し続けている。モイは、ハワイの王様が食べていたと言われる高級魚である。近年漁獲量が減っているが、「ニシンのような、ムツのような魚で、蒸すとノドグロのようになる」という。
そのモイを中澤は「赤シャリ麹漬け」にして出している。
「赤シャリ麹に2週間ほどモイを漬け込んで発酵させるんです。いわば、なれ寿司ですね。でも、フナ寿司まではいかないんです。モイはちょっとクセがあるんですけど、発酵させることでそれがなくなる。赤シャリ麹漬けは、日本でも流行るかもしれないというぐらいの新商品です」
南国の魚の味をどう引き出すか、中澤は日々腐心しているが、現状「すし匠ワイキキ」の鮨は、ハワイの魚だけでまかなえているわけではない。アメリカの西海岸、東海岸から取り寄せている魚介も少なくない。
たとえば、ウニはサンタバーバラ産だし、ハマグリに似た貝「チェリーストーンクラム」はロサンゼルス、ミル貝はシアトルともっぱら西海岸に頼っている。とりわけハワイは貝が弱い。
米はカリフォルニア米を軸に据えた。
「シャリはカリフォルニア米8に日本米2という割合。カリフォルニア米はそれだけでいけるぐらい酢飯に適していた。私は鮨飯に古米を使うんですが、それに近かった。もしかしたら、大化けして日本でも使い出すかもしれないというぐらいよかったのです」(文中敬称略)
取材・文■一志治夫、撮影■熊谷晃
※週刊ポスト2017年2月3日号