日本では現在、PMの実践を目指す大規模な臨床試験が始まっている。
「SCRUM・Japan(スクラム・ジャパン)」と銘打たれたそのプロジェクトには、全国200以上の医療機関と15の製薬会社が参加。同プロジェクトの臨床試験に参加したがん患者は、これまでに約7000人近い。進行した肺がんと消化器がんの患者を対象に、遺伝子変異を無料で解析し、それにマッチングする薬を投与する試みを続けている。
その過程で、驚きの治療効果が実証されている。
ある40代の女性は4年前、ステージ4の肺がんが見つかり、主治医から「余命2年」と告げられた。スクラム・ジャパンに参加し、がんの遺伝子を解析したところ、その変異が「RET」という型だと判明。しかし、このタイプに効く肺がんの薬はなかった。
そこで、「RET」に治療実績のある甲状腺がんの分子標的薬を使うと、68mmだった腫瘍が1か月で48mmまで小さくなった。余命宣告から5年目の今も闘病を続けている。
22歳で大腸がんを患い、5度の手術と4度の再発を繰り返した40代の男性は、2016年5月にリンパ節への再発が見つかった際、「もう手術はできない」と医師から“最後通告”を受けた。
しかし、スクラム・ジャパンの臨床試験に参加して、皮膚がんの一種であるメラノーマの治療薬を使うと、がんは2か月で43%縮小した。その後、この男性は職場に復帰できるまで回復したという。
部位の違うがんの薬を用いた治療は従来のセオリーから外れる。前述したケースのように「部位」にこだわらず「遺伝子」の変異を解析し、その変異をピンポイントで狙う治療薬を選択することこそ、PMが「がん治療の革命」とされるゆえんだ。
こうした試みを伝えた 『NHKスペシャル』(2016年11月20日放送)は大反響で、スクラム・ジャパンには問い合わせが殺到したという。
※SAPIO2017年2月号