近年になって、胃がんの原因がヘリコバクター・ピロリ菌だと明らかになってきた。ピロリ菌に感染した胃をもつ人が塩分を取りすぎたりストレスを感じたりすると、慢性胃炎から萎縮性胃炎になり、胃がんが発生しやすくなる。
菌保有者は多く、日本ヘリコバクター協会の推計では日本人の3500万人以上がピロリ菌に感染し、50代以上の感染率は70~80%に達するとされる。北海道医療大学学長の浅香正博氏が指摘する。
「ピロリ菌を薬で除菌すれば、胃がんになるリスクは激減します。実際、胃がんと同じくピロリ菌が原因とされる胃潰瘍と十二指腸潰瘍は2000年にピロリ菌の除菌が保険適用となった後、10年で患者が56%減少した」
2013年からは内視鏡検査でピロリ感染胃炎と診断されると保険で除菌できるようになり、除菌治療を受ける人が年10万人から約150万人まで急増した。
「その結果、40年間にわたって毎年5万人前後だった胃がんの死者数が2015年は4万6600人と7%も減りました。予防医療を行なえばがんの発症数を抑えることができ、その結果、死者数を減らすことができるんです」(浅香氏)
※週刊ポスト2017年2月10日号