「最初はジャンパーを着ることで“不正受給を許さない”との決意がありましたが、次第に何が書かれているか気にせず、部活のジャンパーのように着るのが当たり前になっていました。今回、受給者などに不快な思いをさせたことは本当に申し訳なく思いますが、その一方で、この仕事は職員が同じ気持ちにならないと乗り切れないとの思いも捨て切れません…」
女性セブンの取材に対して他の職員も口々に、ジャンパーを導入した後、連帯感が高まり、支え合って仕事ができるようになったと振り返った。
現在、小田原市には、「おれたちをバカにしているのか」「今からお前らを刺しにいくからな」など脅迫めいた電話がある一方、冒頭のように、市を応援する声もある。同業のケースワーカーからの激励も多数届いているという。
それほどまでに「連帯感」がないと乗り切れないキツイ仕事の実態とは。生活保護の最前線で今、いったい何が起きているのか──。
◆ケースワーカーの苦労
1月下旬、小田原市の生活保護窓口を訪ねた記者の目に飛び込んだのは、ひっきりなしにやって来る相談者の姿だった。2つの窓口には人が絶えず、職員は昼休みの時間でも構わず対応を続けていた。
そもそも生活保護とは憲法25条の理念に基づき、国や自治体が「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しつつ、自立を促す制度のことだ。年齢や健康状態、困窮の程度などで毎月の保護費が決まる。
希望者は地域の自治体が設置した福祉事務所に申請する。その際、面接対応や受給後の家庭訪問など、行政で生活保護全般を担当する職員を一般に「ケースワーカー(CW)」と呼ぶ。
小田原市にはCWが26人いて、面接の専門員2人をのぞく24人が約2320世帯を受け持つ。社会福祉法は、CW1人当たり80世帯の受け持ちを標準とするが、小田原市ではCW1人で約100世帯を担当する。その業務は過酷そのものだ。
「申請者の資産や扶養者を調査したり、受給者を訪問して自立に向けた支援をするのがCWの大きな仕事です。事務作業が膨大で時間的余裕がなく、家庭訪問は週1度、10~20件まとめて行います。預貯金や年金の調査から自己破産の手続きまで行い、面接では7時間ぶっ続けで話を聞くこともある。朝から晩まで働きづめでキリがなく、この業務を始めてから“仕事が終わった”と思って帰宅した日は1日もありません」(Aさん)
肉体だけでなく、精神的な疲弊も大きい。小田原市の男性CW、Bさんが言う。