白川和子、東てる美、美保純といった、ピンクからロマンポルノ女優になり、さらに一般映画で活躍した女優達もいるが、ロマンポルノにも出演はしているものの、ピンクで女子大生や若妻役を演じ、その固い蕾のような風情で、大学生や予備校生に人気のあった日野繭子や、一般映画からピンク映画という逆コースをたどり、被虐的な女性の情念をにじませる色気が圧倒的だった丘なおみ(岡尚美)など、等身大の人間を描くピンク映画でこそ輝いた女優達もいた。
監督陣も、先述した若松孝二、滝田洋二郎、廣木隆一、高橋伴明といった、後に一般映画界に場を移して活躍することになる人材もいれば、向井寛や渡辺護など、自ら作品を多産しながら、ピンク映画から旅立つ未来の人材をたくさん送り出しもした巨匠もいる。
また井筒和幸のように、現在やはり一般映画界を支える才能の一人でありながら、もともとポルノ映画が大好きで、地方で何かデカイことをやりたいと悶々とする気持ちと、抑えきれない性欲が重なる若者たちを主人公にした自主ピンク映画を作り、それを引っ提げてデビューしたつわものもいる。
ピンク映画のセックスはあくまで疑似行為であり、本番行為を前提にし、かつ家に居ながらにして見られるアダルトビデオの台頭の陰に隠れていった。
だがそのAVも、今後規制の強化で本番セックスを羅列すればいいという風潮は後退し、3D眼鏡を用いるVR表現のようなバーチャルなものと、ピンク映画がやってきたような、人間のドラマのあるポルノ表現の両極が、求められていくようになるのではないだろうか?
●きりどおし・りさく/1964年東京生まれ。1993年『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』で著作デビュー。2001年『宮崎駿の〈世界〉』でサントリー学芸賞受賞。『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉 70年代怪獣ブームの光と影』ほか、著書多数
※週刊ポスト2017年2月10日号