第3四半期決算とともに各社の今期見通しが明らかになる中、日本経済に大きなインパクトを与えたニュースが、2つの財閥系商社の大幅上方修正だった。2大財閥の看板企業が揃って復活したことを、財界や投資家は大いに歓迎した。
三菱商事は2月2日、2017年3月期の連結最終損益が4400億円の黒字になる見通しだと発表した。従来予想の3300億円を1100億円上回る、2度目の上方修正となる。
振り返れば三菱商事にとって、この1年は屈辱とともに過ぎ去った。2016年3月期の決算は資源部門の低迷が響いて4260億円もの減損損失を計上し、創業以来初となる赤字に転落。岡藤正広社長のもと、「打倒財閥」を掲げてなりふり構わず猛進した「野武士集団」の伊藤忠商事に、15年間君臨してきた商社トップの座を明け渡した。
だが、今期の黒字転換により、三菱商事は商社トップの座を奪い返す見込みだ。三菱商事の復活を後押ししたのは資源価格の回復だ。とくにオーストラリアに保有する原料炭事業が好調で収益が急拡大した。
三菱商事と同じく、前期は初の赤字決算となった三井物産は2月8日に決算を発表した。前日、日経新聞が「連結最終損益が2800億円の黒字になり、急回復する」と報じたが、発表された数字は日経報道をさらに200億円上回る3000億円だった。当初予想を800億円も上回る大幅な上方修正だ。
両社の復権は単なる一企業のV字回復にとどまらず、日本経済全体の「福音」になると指摘するのは、専修大学経済学部教授の田中隆之氏だ。
「これまでの総合商社は資源部門に偏っており、三菱・三井とも資源価格の暴落で赤字に転落しましたが、現在は脱資源を標榜し、事業経営にシフトしつつある。成長しそうな企業に出資して経営に携わり、優れた技術を見つければ会社を設立して事業化する。三菱・三井が復活に伴いそうした動きを活性化していけば、日本経済全体への好循環が期待できます」
※週刊ポスト2017年2月24日号