角界には今、大きな地殻変動の予兆がある。19年ぶりに誕生した日本出身横綱、稀勢の里の一挙手一投足を多くのメディアが連日報じ、来場所どんな活躍を見せるかに期待が集まっている。その一方で、誰にでも全力でぶつかっていくガチンコ横綱誕生によって、協会内のパワーバランスも大きく変わろうとしているのだ。
それというのも、ガチンコ新横綱の誕生と軌を一にするように、「土俵改革」を訴える貴乃花一門の周辺が活気づいているのだ。
「貴乃花親方は、昨年3月の理事長選で八角理事長(元横綱・北勝海)の多数派工作に敗れ、現執行部体制では非主流派となっていますが、貴乃花を慕う親方は若手を中心に多く存在します」(協会関係者)
師弟関係などの歴史的経緯をベースに成り立つ他の一門と違い、“新興勢力”である貴乃花一門には、貴乃花親方の相撲道に共感した親方たちが集まっている。
「阿武松(おうのまつ)親方(元関脇・益荒男)をはじめ、真剣なぶつかり合いで土俵の充実を図ることをなにより重視するガチンコ部屋が集っており、その勢力は拡大しています。昨年は貴乃花部屋の部屋付き親方だった常磐山(元小結・隆三杉)が、それまで出羽海一門の名跡だった千賀ノ浦を襲名し、貴乃花一門に加わりました」(若手親方の一人)
奇しくも先場所は、この数年、優勝争いを席巻してきたモンゴル力士グループの退潮も明らかだった。
横綱・鶴竜は10日目までに5敗して11日目から休場。これまで何度となく稀勢の里の前に立ちはだかってきた白鵬も11勝4敗の成績に終わり、2月5日に行なわれた大相撲トーナメントも初戦敗退といいところがなかった。
初場所14日目に白鵬に土をつけたのは貴乃花部屋の貴ノ岩で、白鵬がそこで3敗目を喫したことにより、稀勢の里の優勝が決まった。