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2017.02.16 07:00  SAPIO

露「サイバー攻撃」対応にみるトランプ大統領の外交センス

 この時、米国は政権移行期にあった。CIA(中央情報局)は、プーチン大統領の承認の下、GRUとFSBが米国の民主党、共和党に対するサイバー攻撃を行ったというインテリジェンス情報をトランプ次期大統領の政権移行チームにも伝えているはずだ。

 当然、トランプ氏もこの情報を得ている。その上で、トランプ氏は、あえて「ロシアではなく、他の誰かがやった可能性もある」と述べたと考えるのが妥当だ。

 1月11日(日本時間12日)に当選後初めて行われた記者会見で、トランプ氏は、〈大統領選を狙ったサイバー攻撃について「ハッキングはロシアだと思う」と述べ、ロシアの関与を認めた。〉(1月12日「日本経済新聞」電子版)。しかし、ロシアに対する非難は差し控えた。

 ロシアもオバマ民主党政権とトランプ氏を完全に切り離して、トランプ政権下での米露関係改善を狙っている。そもそも米国がロシアの外交官を35人も追放したのに、ロシアがそれに対する対抗措置を見合わせるのは異例の事態だ。

 米露間で35人の外交官の大量追放合戦が行われれば、米露関係は2、3年停滞する。諜報戦は「裏世界」に限定して、表の外交の世界では、淡々と仕事をするというのが大国が通常取る対応だ。この点で、プーチン大統領とトランプ氏は認識を共有しているようだ。

 さらに、トランプ氏は、2014年の米国によるウクライナ制裁以後、中断している米露の核軍縮交渉を進める意向を示唆した。

 オバマ大統領は、米露関係の障害になる大きな置き土産をして政権を去ろうとしたが、プーチン大統領とトランプ氏によって体をかわされてしまった。トランプ氏は、インテリジェンスに関しては素人のはずだ。しかし、サイバー戦のような裏世界のインテリジェンスに関する問題を表の世界に上げて、外交を混乱させることはよくないと考えているようだ。

 このセンスの持ち主ならば、CIAやNSA(国家安全保障局、盗聴や通信傍受に従事する機関)やFBI(連邦捜査局、国内の治安維持、テロ対策、スパイ対策を担当)などが入手した機微に触れる情報を、裏で巧みに用いて、政権運営をすることができる。

●さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。共著に『新・リーダー論』『あぶない一神教』など。SAPIO連載5年分の論考をまとめた『世界観』(小学館新書)が発売中。

※SAPIO2017年3月号

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