ワセダクロニクルの編集長を務める渡辺周氏は、昨年3月までは朝日新聞の記者で、原発事故に関する長期連載「プロメテウスの罠」取材チームの主要メンバーだった。退社後に、早稲田大学ジャーナリズム研究所に設けられた調査報道プロジェクトの発信媒体「ワセダクロニクル」の編集長に就いたという。渡辺氏が言う。
「編集部にはフリーのジャーナリストやエンジニアも含めて10人ほどいます。それにジャーナリスト志望の早稲田大学や他大学の学生が20人ほど参加していますが、私を含めメンバーは現状、無給です。利害関係から独立するために、広告を取らず、調査報道を支える人たちからの寄付金で運営しようと考えているからです」
ホームページでは、〈政府や大企業といった大きな権力を持つ組織の不正や腐敗を自力で取材し公表する〉とし、〈取材にあたっては、公益性(公共の利益)があると判断した場合はあらゆる手段を排除しません〉と宣言している。
発足から約1年、約10か月の取材期間を経て用意された創刊特集が、「買われた記事」だった。
「ほかにも複数、並行して取材している記事があります。我々が今回提起した問題に、自ら斬り込んでいく大手メディアは皆無です。大手メディアとも連携してこの問題を深く掘り下げたいと考えているのですが、現実は難しいですね(苦笑)」(同前)
※週刊ポスト2017年3月3日号