ただ、そうした「立川モデル」も今後どこまで確立できるかは不透明だ。厚労省が法制化を目指す受動喫煙防止対策は、飲食店などを中心に屋内禁煙の範囲を広げ、ゆくゆくは屋内を全面禁煙にするのでは、と見られているからだ。
屋内からすべての喫煙者を締め出せば、屋外で吸える場所を探してさまよう“喫煙難民”は増える一方だ。
神奈川県・横浜駅の「みなみ西口」付近では昨年末、それまで17人しか入れずポイ捨ても横行していた喫煙スペースを大改装し、70人分のスペースを確保して高い仕切り板もつけた喫煙所に生まれ変わらせた。歩道には季節の花の鉢植えも並ぶ。
西区長の吉泉英紀氏は、〈これまで横浜市の玄関口として恥ずかしい状況だったが、きれいに整備することで汚しにくくなるのでは〉と話した。喫煙者のニーズに応えることで、むしろマナー向上や街のイメージ改善に繋げようと期待を寄せている。
一方、国はどうだろう。東京オリンピックに向け、屋内の喫煙環境に規制をかけることだけにとらわれ、屋外はいわば自治体任せ。もちろん、人々が多く集まる駅周辺は、地域住民や来街者も含めた生活拠点として重要な役割を担う。屋内・屋外の喫煙環境をどうバランスよく整備していくかは、受動喫煙防止の観点ばかりでなく、各自治体による街づくりの根幹に関わる一大事である。
しかし、歩きたばこはしない、他人に煙がかからないよう配慮する、携帯灰皿を持ち歩く──といった最低限のマナーを守ったうえでの路上喫煙の是非、そして屋外での喫煙可能エリアの基準などについても、今後、国民全体のコンセンサスを得なければならない問題だろう。ただ喫煙者を排除するだけでは、何の解決にもならない。