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受動喫煙防止法案 喫煙客多い外食店は8401億円の売上減に

飲食店組合などは分煙努力の継続を訴えて著名活動中

 厚生労働省が近く法制化を検討している受動喫煙対策の強化案。もし罰則付きのたばこ規制が実施された場合、もっとも影響を受けるとされているのは、「店内原則禁煙」の方向性が示されている飲食店だ。

 これまで〈喫煙可〉だった店舗や時間帯・フロアなどによって〈分煙〉を掲げてきた店舗から喫煙者がいなくなれば、深刻な客数減や売り上げの落ち込みが心配される。事実、その損失は莫大な額にのぼることが分かった──。

 市場調査会社の富士経済が3月3日に公表したアンケート調査によると、東京・愛知・大阪の3都市圏の「居酒屋、バー、スナック」「カフェ・喫茶店」「レストラン」計7002店を対象に法案施行後の売上金額への影響を聞いたところ、居酒屋等で75.4%、全体でも57.6%の店舗責任者が「売上が減少する」(有効回答1020店)と答えた。

 そのうち売上減に影響するものとして、「既存客の来店頻度が減る」(62.1%)、「既存客の大半が喫煙者だから」(58.0%)、「滞在時間が減少し、客単価が減少」(34.0%)といった要因が多く挙げられた。

 もともとこの3業態は喫煙客の割合が高い店舗群ではあるが、その市場規模は全外食市場規模約21兆円のうち13兆円を占める。富士経済の推定では、喫煙規制による3業態への影響は、全国で8401億円の売上減になるという。

「外食産業は巨大市場とはいえ、個人経営店を中心に年々減少しており、受動喫煙防止法案が法制化されると、さらに減少推移に拍車がかかることが想定されます。

 新規業態の開発を活発に行える大手チェーンとは異なり、新規客の取り込みも容易ではなく、客数が戻らないと感じている店舗も多いことから中小規模の外食店にとっては一層厳しい状況になると見られます」(富士経済・東京マーケティング本部の調査担当者)

 今のところ、酒を提供する小規模なバーやスナックは規制の対象外とする原案も持ち上がるが、食事に合わせて酒を提供する居酒屋や焼き鳥屋、おでん屋などは認められず、店内に喫煙室を設けない限り原則禁煙となる可能性も出てきた。

 富士経済の調査では、居酒屋・バー・スナックの54.1%が月商200万円未満で、資金面からも分煙設備を設置するのが難しい店が多いことが分かった。

 そうした飲食店の窮状は、調査項目とは別の自由回答からも窺えた。前出の富士経済担当者が話す。

「もちろん受動喫煙防止の強化をいち早く実施してほしいとの賛成意見も多数ありましたが、やはり飲食店は売上金額や影響が及ぶ期間を心配し、『事業者が主体的に(喫煙可否の)サービス内容を選択できる制度を』『国や自治体による支援策(分煙設備の補助金拡大など)も実施してほしい』といった回答が目立ちました」

 中には『そもそも政府が介入すべきではない。喫煙させるのもさせないのも店の自由。それならば、たばこの販売を禁止すべき』との過激な意見もあったという。

 店の分煙環境を含め、顧客ニーズに合わせたサービスの多様性で成長してきた日本の外食産業。受動喫煙対策の一律規制は、その勢いを削ぎかねない。

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