多くの人が悩まされ、今の時期、地域によっては昨年の倍以上の飛散量となることが懸念されている花粉症も含め、何らかのアレルギーを抱えている人は増加の一途をたどり、今や全国に約6000万人。日本人の2人に1人がアレルギーを持っていることになる。東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科診療部長・勝沼俊雄医師が言う。
「アレルギーはこの50年間で劇的に増えた病気です。遺伝的な体質はそんなに短期間には変わらないので、環境の変化による影響ではないかと考えられています。長くいわれているのが“衛生仮説”。
国が豊かになり、社会インフラが整備され、環境が清潔になったために、アレルギーの原因となる物質から感染を抑える免疫がトレーニングの機会を失って育たなくなり、アレルギーが発症しやすくなったのではないか、というものです」
ひとくちにアレルギーといっても、その症状も原因もさまざまだ。しかし、最近では新たな治療法が次々に登場してきた。私たちはこの厄介な“現代病”を克服することができるのだろうか。
◆疲れや体調の悪さ、鎮痛剤をのんだことが影響することも
人間の体には、毒などの外的を駆逐するために“免疫”という防御システムが備わっている。体に害がある“異物”が入ってきた際にIgE抗体を作り、“異物”を攻撃して体を守るのが役割だ。
しかし、アレルギーになると、体に害がない花粉や食べ物まで“異物”と認識。それが体内に侵入してくると、IgE抗体が捕まえ、肥満細胞などがヒタスミンなどの化学物質を放出。その結果、じんましん、鼻水、くしゃみなどの防衛反応を引き起こす。これがアレルギーの症状だ。
国立病院機構相模原病院臨床研究センター・アレルギー性疾患研究部部長で医学博士の海老澤元宏さんによれば、同じ食物アレルギーでも、大人と子供では原因となる物質は違うという。
「乳児期から幼児期にかけては、鶏卵、牛乳、小麦が3大原因物質で、全体の7割以上を占めますが、多くの場合は大人になるにつれて治っていきます。一方、大人になってから発症する場合は、小麦(運動誘発)、魚類、甲殻類、果物類などが原因となるケースが目立ちます」
恐ろしいのは、それまでアレルギー症状がまったくなかった人が、突然、アナフィラキシーを起こしてしまうケースもあることだ。2015年にはタレントの叶美香が、咳止め薬をのんだ後にアナフィラキシーによる呼吸困難で緊急入院したことを明かしている。