「そもそも居酒屋とバーに明確な区分けはありませんし、焼き鳥屋のように狭い店でも煙の換気設備が整っている店はあります。店の業態によって例外を設けるのには無理があります。
また、地方に行くと分かりますが、厚労省が検討している30平米以下の小さな店は逆に少ないため、例外はあってないようなもの。こんな不公平な法案を作るくらいなら、今まで通り、店の分煙努力をさらに推進していったほうがよほど現場の混乱もなくなります」
ある居酒屋関係者は、「バーだけ喫煙が認められるんだったら、ウチも法案成立後に看板を掛け替える」と冗談とも本気ともつかない言い方をする。
禁煙推進派にとってみたら、「それならば、初めから例外を設けず、すべての飲食店を屋内禁煙にすればいい」と主張するはず。だが、前出の小城氏はこう反論する。
「仮に店内をすべて禁煙にして、喫煙者は店の外でという諸外国に方式に倣ったとしても、今の日本は特に人通りの多いエリアでは路上喫煙を禁止している自治体が多い。また店先に灰皿を置けば、お客さんでない喫煙者が集まってきたり、吸い殻の管理など安全上の理由からも問題があるでしょう。
やはり、店側の自主的な取り組みや、喫煙者の配慮に委ねた“日本ならではの分煙社会”を進めていくべきだと思います」
そんな現場の声を受けてか、3月8日には“屋内禁煙推進派”と見られていた自民党受動喫煙防止議員連盟(会長・山東昭子参院議員)も総会を開き、小規模なバーやスナックのほか、居酒屋も規制対象外にする考え方を示した。
冒頭で紹介した自民党たばこ議連の「受動喫煙防止に関する基本理念」には、次のような文言が書かれている。
〈“喫煙を愉しむこと”と“受動喫煙を受けたくないこと”は、ともに国民の権利として尊重されなければならない〉
もちろん、受動喫煙の影響を最小限にとどめることは時代の流れからいっても喫緊の課題であることは間違いない。だが、合法的な嗜好品であるたばこを吸う喫煙者の権利も侵害してはならないはず。
果たして、厚労省は喫煙者にも非喫煙者にも不公平感のない法案を出すことができるのか。