水晶体の調節力は20代から徐々に低下し、40代から自覚症状が出始め、50代でほぼ全ての人が老眼を自覚する。一度老眼が始まれば、元通りには戻らない。「外科手術」という選択肢もあるが、多くの人が「老眼鏡」で症状に対応しているのが実情だ。
老舗眼鏡店「東京メガネ」の認定眼鏡士・我妻三朗氏が老眼鏡選びのポイントを語る。
「どういう用途で、どういう場所で使うかによって選択は大きく変わる。目の状態は千差万別で、用途も読書や料理、パソコン作業、車の運転、ゴルフなど多岐にわたる。自分の目の悩みやライフスタイルに合った老眼鏡を作ることが必要です」
現在、主流となっているのが「遠近両用メガネ」だ。眼鏡レンズ専門店「れんず屋」の古屋和義代表がいう。
「見た目は普通のメガネと変わらない。『老眼鏡をかけるのは恥ずかしい』と抵抗がある人に愛用されている。
累進屈折力レンズで作られる、『遠近両用メガネ』はレンズの位置によって屈折力(度数)が変化。レンズの上部が遠用部、下部が近用部となっており、中間部分から緩やかに度数が変わっていく。複数の距離を1つのメガネで見えるようにしたものです」
これまで老眼鏡といえば、一定の距離にだけピントが合う単焦点レンズの「リーディンググラス」や焦点距離の異なる2種類のレンズを繋ぎ合わせた「二重焦点レンズ」のメガネが一般的だった。
「単焦点レンズのメガネは合わせた距離以外は見えにくいため、読書用(40cm程度)、パソコン用(60cm程度)など、使うシーンに合わせて複数のメガネが必要となる。二重焦点メガネは一目で老眼鏡と分かるため、『老眼鏡をかけるのは恥ずかしい』と抵抗がある人が多かった。
これらの“悩み”を解消したものが『遠近両用メガネ』です」(前出・我妻氏)
また現在は「遠近両用」だけではなく、「中近両用」「近近両用」といったさまざまな距離に対応できる老眼鏡も普及し始めている。
※週刊ポスト2017年3月24・31日号